「あれも大事、これも大事」と悩むのではなく、「何が本質なのか?」を考え抜く。そして、本当に大切な1%に100%集中する。シンプルに考えなければ、何も成し遂げることはできない――。LINE(株)CEO退任後、ゼロから新事業「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮氏は、何を考え、何をしてきたのか?本連載では、待望の初著作『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)から、森川氏の仕事術のエッセンスをご紹介します。

人生に「まっすぐな道」など、ない!

 人生には「まっすぐな道」がある──。

 若いころ、僕はそう思っていました。
 いい大学を出て、いい会社に入って、真面目に仕事をすれば、出世もして、給料も増えて、子どもも成長して、幸せな老後が待っている。そんな「まっすぐな道」があると思っていたのです。世間一般で信じられていることを、なんとなく信じていたのでしょう。そして、その「まっすぐな道」から外れるのは、少々怖かった。

 しかし、僕は途中で、その「まっすぐな道」を捨てて生きてきました。自分がやりたいことを追求して生きていきたいと思ったからです。道なき道を行くのは、決してラクではありませんでしたが、世の中に少しでも価値を提供できるように、一日一日を懸命に生きることで、なんとかここまでやってくることができました。

 そして、今はこう確信しています。
 明日のことすらわからないのが、人間にとって普通のことなんだ、と。

 かつての僕が思い描いていたような「まっすぐな道」など、ただの幻想。むしろ、未来はわからないと思って生きないと危険です。特に、現代のように変化の激しい時代には、「いつ何が起きるかわからない」と常に緊張感をもっていなければならない。

 だからこそ、感性が研ぎ澄まされていく。変化に備えて準備をする。そして、変化が起きたときには、機敏に対応する。そんな野性的な生命力が養われるのです。逆に、「まっすぐな道」を信じたり、誰かが未来を教えてくれると期待して、その現実と向き合わずに、日々を漠然と生きるのがいちばん危ないのです。

 いわば、人間は世界に放り出されているようなもの。そこに、決まった道などありません。人間は、どこまでも自由なのだと思います。すべては、自分が決めること。どんな仕事をするか、仕事とどう向き合うか、どんな会社で働くか、何を大切にして生きるか……。その選択で、人生は決まっていくのだと思うのです。

 もちろん、常に不安です。
 でも、それがこの世の現実なのだから、むしろ、その不安を楽しんだほうがいい。未来がわからないからこそ、可能性が無限大にあると考える。そして、その可能性に自分を賭けていく。そのような生き方が大事なのだと思います。

 世の中には、100%いいものはありません。どんなものにも、いい面と悪い面がある。大事なのは、そのいい面を見て、ものごとをポジティブに考えることではないでしょうか。

 たしかに、「未来がわからないこと」「変化が激しいこと」にはネガティブな側面があります。しかし、「将来が不安だから挑戦しない」「変化が速いからついていけない」などと考えても、何も価値あるものを生み出すことはできません。むしろ、「未来がわからないからこそ可能性がある」「変化が激しいからこそチャンスがある」と考えて、積極的に生きたほうがいいと思うのです。