高齢者の多くが自宅で罹患
急増する熱中症の真実

 本格的な夏の到来を前に、日本国民は今年も「あのリスク」に備えなければならない。毎年、多くの人が亡くなる「熱中症」だ。

 あまり知られていないことだが、熱中症による死亡者数は急増している。環境省の資料「熱中症環境保健マニュアル2014」によると、1993年以前は年間平均の死者数は67人だったが、94年以降は492人に増大。猛暑だった2010年は1745人に上り、93年以前の年平均に比べて何と26倍にもなっているのだ。死亡者のうち65歳以上の割合は、95年は54%だったが、2010年は79%に増え、高齢者が大半を占めるようにもなった。

東急ハンズ新宿店の暑さ対策コーナー担当の内田諒さん(右)と販売促進担当の渡部貴志さん。熱中症対策グッズの売れ行きも好評だ

 救急搬送者数も激増している。09年は1万人余りだったが、猛暑の10年には5万人超、同じく猛暑が続いた13年には6万人近くに上昇。年齢別では65歳以上が半数を占めた。

 昨年は西日本で冷夏、東日本でも夏後半から気温が下がり過ごしやすかったにもかかわらず、救急搬送者数は4万人と高止まりしている。近年の熱中症被害の拡大は、温暖化やヒートアイランド現象に加え、高齢者人口の増大が背景にあるだろう。

 もう一つ確認したいことがある。国立環境研究所が「熱中症患者情報速報平成26年度報告書」で示した、「年齢別にどの場所で熱中症になっているか」を表したデータだ。それによると、65歳以上の高齢者は55.4%が「住宅」で発症している。高齢者は暑さへの感度が鈍く、発汗もしづらいことから、クーラーをかけずに家の中にこもり、知らぬ間に熱中症にかかってしまう場合が多い。それに対して7~18歳の子どもは「運動中」が47.4%と最も多い。

 男性の働く世代は仕事中が多い。19~39歳では39.3%、40~64歳では35.2%が「作業中」に熱中症を発症している。