一方、2010年頃から“研究開発型ベンチャー”の機運が高まってきます。2012年に京大の山中伸弥教授がiPS細胞開発でノーベル生理学・医学賞を受賞したこともこの流れを後押ししました。ITアプリからバイオへ、人材も文系から理系へとシフトする大学内ベンチャーの動向が、顕著になってきたのかもしれません。

 私立大学でも、慶應では冨田勝教授を所長とする先端生命科学研究所が活躍。2013年には、冨田先生らが創設し、慶應義塾も出資したバイオベンチャー企業、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズが東証マザーズに上場を果たしています。さらには、スパイバーはじめ、多くのバイオベンチャーがこれに続くと思われます。

VCと経営人材の不在
理系発バイオベンチャーの課題

 しかし、バイオ・医療イノベーションの大学発ベンチャーの波をさらに大きくし、欧米に負けない競争力を付けるには、まだまだ課題があります。

 まず、こうした“医療などのバイオベンチャー”は、“ITサービスのベンチャー”よりも開発したプロダクトを市場に出して採算に乗せるまで時間がかかるなど、よりハードルが高いことが多いのです。ITに関して、ベンチャーが社会に提供する各種ITサービスなら、よほどのことがない限り、人命に直接関わるような実害はありません。何か問題があるもの、あるいは使い勝手の悪いものは、マーケットメカニズムの中で淘汰されていきます。経営サイクルが早いぶん、投資の結果を長く待つ必要がありません。

 一方、バイオベンチャーの場合、創薬が典型的ですが、基礎研究から実用化してマーケットに出すまで、有効性と安全性が実証されなければならず、モノになるまで幾多のハードルを越えなければなりません。その間、経営を支える潤沢なキャッシュフローを集めるという問題が出てきます。まさに、開発から実用化までの「死の谷」をどう乗り切るかが生命線です。

 この点、アメリカの大学発バイオベンチャーは、ボストン、サンディエゴなどで、バイオベンチャーが生まれて成長するエコシステムがうまく機能しており、「死の谷」の時期を支えてくれるベンチャーキャピタル(VC)が多く存在します。しかし日本国内には、まだバイオ、とりわけアーリーステージに強いVCが少ないと言われています。