起業して6ヵ月目に入り、具体的に試作車を作る段階に入った。

 今回は、新しい乗り物の開発に挑戦しているベンチャー企業としての体験から感じたことを述べたい。

 筆者が起業した会社では、小さくて便利な新しい乗り物を開発しようとしている。しかし、世の中には自転車、バイク、軽自動車、乗用車などさまざまな乗り物が売られており、加えてバス、鉄道、タクシーなどあらゆる交通手段が提供されている。

 そのなかで、法規を満たし、社会的に受け入れられる乗り物を新たに作ることは簡単なことではない。まさに、どうやってその難題を解くかというのが、当社に与えられた使命だと信じて、そのことばかりを考える毎日を送っている。

 簡単には答えの出せない壮大な問いではあるが、答えは必ず見つかるだろうと前向きに考えている。なぜなら、世の中にはまだまだ満たされていない移動のニーズがたくさん残っている上に、今後、少子高齢化や一極集中が進むと、満たされない移動のニーズがさらに増えていくことは間違いないからだ。

守られた型を破り、そこから離れる
起業プロセスは「守破離」そのもの

 試作車を作る段階に入り、自動車関係者とのミーティングが増えるようになったが、あるミーティングにおいて、パートナーの根津が発した言葉が胸に刺さった。

「守破離というじゃないですか。自動車の常識を覆す新しい乗り物を作れるのは、自動車の作り方を熟知した人間じゃなければならないんですよ」

 つまり、既存の自動車がどういう思想と、どういう仕組みで作られているのかということを熟知していなければ、新しい乗り物を作る際に、どの機能は絶対に必要で、逆にどの機能は変えたり省いたりしても良いのかという判断ができないということだ。