新聞やTVの断片的な情報だけでは、めまぐるしく変わる世界情勢は根本的には理解できない。ニュースの前に、知っておくべき基礎知識というのがある。
私の『アメリカ、ロシア、中国、イスラム圏を知れば、この複雑な世界が手に取るようにわかる』という著書の中で、この「知っておくべき」基礎知識を集めたが、今回は「世界の警察官をやめる」というオバマ大統領の発言は、世界にどんな影響を与えるかを解説する。
「世界の警察官をやめる」と宣言したオバマ大統領
オバマ大統領は、シリア内戦に関するテレビ演説で、退役軍人などから、「米国は世界の警察官でなければいけないのか」という書簡を受け取ったことを明らかにし、次のように述べた。
「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」。
第2次世界大戦後、アメリカは世界の安全保障を担ってきた。冷戦終結以後、超大国はアメリカ一国だけなので、この発言は世界情勢の不安定化を加速させかねない問題である。
この発言の背景にあるのは、深刻な不況により、国際的な危機が起こっても、ただちに米軍を投入することはできないという財政の問題がある。
もうひとつは、2001年から2010年にかけてのアフガニスタンやイラクへの「対テロ戦争」だ。米国内には、多数の米兵が犠牲になったにもかかわらず、直接脅威が根絶できないという厭戦気分も蔓延していた。
たとえば、昨今のシリア内戦に軍事介入を避けるという消極的な姿勢は、ロシアが大胆にもクリミアを併合したり、中国の南シナ海での積極的な拡大主義などを助長する結果となっている。このオバマ発言は、国際社会の問題解決から逃避するという宣言である。