今回は、「過大なノルマに対してどのように売ったのか」を例に、実際にあったケースを紹介します。営業をやっていれば、突然、上司や取引先から無理難題を押し付けられることはよくあります。今回も無謀とも思えるノルマを達成するために、売る側・買う側のマインドを変えて、完売につなげた成功事例です! 皆さんの普段の営業活動に役立ててください。
7月17日発売『セールスは1分で決まる!』連載第8回。
「お金」という物差しから、「人生」という物差しに変える必要性
ここで質問です。皆さんなら、次のケース、どうしますか?
「宮崎さん、これ3万個輸入したんだけど、どうやって売ればいいだろう?」
海外の企業との取引では、たまにたくさんの商品を購入しなければならない事情が出てくるのです。
「3万個だと1年以上の在庫になりますね」
「そうなんだよ」
しばらく考えた私は、こう提案しました。
「3個セットにしましょう」
「3個も? セットに?」
「はい、そうしたら1万個になります」
「そりゃそうだけど」
「3個で3倍の値段ではなく、1セットを3ヵ月分として販売します」
「3ヵ月分?」
「そうです。この商品は1個で約1ヵ月分です。『効果を実感していただくには2〜3ヵ月分の使用をおすすめします』と資料にあります。効果が実感できる3ヵ月分を1セットとして売るんです」
「……」
「『3個という価格』ではなく『3ヵ月という期間』で売ればいいんです。そのほうがお客様に効果を実感していただけるので喜んでいただけます」
この「期間」を軸にした販売方法は大成功でした。
「いくら何でも多すぎるだろう」と思われていた3万個は、予測よりもはるかに早く完売したのです。最後のほうは商品が品薄になり、お客様同士で奪い合いになるほどでした。
なぜ期間を軸にした販売が成功したのでしょうか。お客様は3個分の価格をなぜ高いと感じなかったのでしょう?
それは、「3ヵ月後のきれいになった自分」に対しての代金だったからです。
「これは3ヵ月分が1セットになっています。3か月後にはこんな風に変わります」と説明したことで、3ヵ月先の自分を想像します。
3ヵ月後にはきれいになれるという、お客様の夢が広がります。お客様はその夢に代金を支払ったのです。
同じ個数でも、どう見せるかによってお客様の心理もまったく変わってくるのです。
たとえば、家を販売するときも同じです。
家はすごく高額です。価格だけを聞くとびっくりしますが、この家を買ってからのお客様の人生をイメージしてもらう話をするのです。「一軒の家」ではなく、「50年の人生」で販売すればお客様はまったく違う心理になります。
「子どもが成長し、結婚して孫ができて……」
数十年後、たくさんの孫に囲まれてこの家で楽しく過ごしているご自分を想像できたら、お客様は同じ価格でも高いと感じないのです。50年の幸せな自分の人生のために支払う金額となるわけです。
保険のセールスも同じです。今現在、健康で比較的若い人に保険を売らなくてはいけません。
「毎月の掛け金は2万円です」と言っても、「元気だし、毎月2万円も保険料を払うのはもったいない」と思われます。
ここで、一つの保険商品ではなく、「この先、万が一病気になっても安心です」と数十年の安心を価値として話せば、お客様は、「そうか、今は若くて元気だけど70歳になると不安だな」と考えるのです。
「商品をどう売るか」はとても重要です。「個数」ではなく、「期間」で販売すれば、お客様がその先をイメージして夢がふくらむのです。
夢に対する価値は、商品そのものの価値とはまったく別のものなのです。
POINT
個数で考えると、お金という物差しで考えますが、
期間で考えれば、人生という物差しで考えます。