前回の記事では、営業で確かな実績を積んできた経営コンサルタント・石原明氏と「質問型営業」を開発した青木毅氏による、営業にクローザーが少ない現実と、商品・サービスが異なっても売れる人間はどこに行っても通用する人材と話した。後半は、営業に対する誤解を解くとともに、営業力がもたらす可能性を紹介します。 (撮影/熊谷章)

売る行為に怖さを感じる必要はない

青木毅(あおき・たけし)1955年生まれ。大阪工業大学卒業後、飲食業・サービス業を経験し、米国人材教育会社代理店入社。88年、セールスマン1000名以上の中で5年間の累積業績1位の実績をあげる。97年に質問型営業を開発。98年には個人・代理店実績全国第1位となり、世界84ヵ国の代理店2500社の中で世界大賞を獲得。株式会社リアライズ(本社:京都府)を設立後、2002年に質問型セルフマネジメントを開発。大阪府、大阪府警(共に6年連続)、東京都など、自治体への質問型コミュニケーションを担当指導する。08年、質問型営業のコンサルティングを企業・個人に向けてスタート。現在、大手カーディーラー、ハウスメーカー、保険会社、メーカーなどで指導を行い、3ヵ月で実績をあげ、高い評価を得ている。 著書には、『ミッション・コミュニケーション』(あさ出版)、『ビジネスリーダーの「質問力」』(角川SSコミュニケーションズ)、『説得・説明なしでも売れる!「質問型営業」のしかけ』『営業は「質問」で決まる!』『アプローチは「質問」で突破する!』(ともに同文舘出版)などがある。

石原 企業になぜお金が入ってくるかというと、こちら側が提供した商品・サービスに対して喜んでくれたり、幸せになったりするからです。

 この循環じゃないとビジネスは成り立ちません。このサイクルさえ意識していれば、売ることが怖くなくなります。

 悪いモノを売っていないのに、なぜかクロージングを怖がる人がいますよね? そういう人に尋ねたくなります。「悪いことをしているの? 良いことをしているでしょ!」と。

青木 そう思えると、売っておしまいもなくなっていきます。質問で相手の欲求を聞いて、そこへ説明しているから、顧客は自ら期待をして買うのです。そうすると、「フォローアップ」も当たり前になってきます。

石原 本来、顧客が買いたいのを邪魔しなければ売れるもの。よく友だちの紹介だから買ったと聞ききますけど、「家なら買うの?」という話。

青木 私の場合は質問して、欲しいものをどんどん明確にしてあげて、「それならこれがいいですね」で十分。それなのに、聞いている途中で、「これなら絶対いいです」と言ってしまうからクロージングできない。お客様の思考の邪魔をしているわけですからね。