前回は人材系企業の若手営業パーソン3人に話を聞きました。

 はからずも営業という仕事をすることになった彼らの悪戦苦闘、試行錯誤、それを通して職業人として成長する様がリアルに感じられたでしょうか?

 今回は、営業として30年以上のキャリアを持つベテランの営業論です。

営業歴30年以上
13人の部下を抱える営業部長(52歳)

「まあ、30年前と今とじゃ、いろいろ環境が変わったからねえ」

 野口道夫氏(仮名)は、営業に関する取材の役に立つかどうかわからない、という理由を、こう切り出しました。

 営業という仕事について大学生に理解してもらうような記事を書こう。

 こう考えた私が、まっさきに話を聞こうと顔を思い浮かべたのが野口氏でした。52歳。通信系企業から総合ITメーカーの販売会社に転職し、キャリアはトータルで30年。いまは13人の部下を抱える営業部長として辣腕をふるっています。

野口「自分が単独でお客様を訪問する、という営業は、今はほとんどない。部下と同行して、見込み案件の受注精度を高めるとか、既存顧客との関係性を良好に保つために定期的にあいさつ回りをするとかが中心だね。それと、トラブル発生後にお詫びや再発防止策の説明をするのも重要な仕事。情報システムが商材だから、残念だけどトラブルはつきもの。だけど、不謹慎な言い方かもしれないけれど、それはチャンスでもある。誠意をもって対処したことが評価されて、より親密になることもあるからね」

「逃げたらダメ、ということだね」

野口「そういうこと。小さいころ、ケンカしてお互いを理解しあって仲良くなることに似てるんじゃないかな」

 野口氏の話を聞きながら、なんとも言えない感慨がわきます。

 実は野口氏は、私の小学校の同級生。3年生から卒業まで同じクラスで、彼の言う「ケンカして仲良くなる」を地で行った間柄でした。

 小学校を卒業すると同時に、引っ越してその町を離れた私が、彼と再会したのは30代後半だったでしょうか。以後、ときどき会って飲む、という付き合いが続いています。