情報技術の革新により、職業や仕事の在り方が世界的に大きく変化している。工業化社会の詰め込み型教育はもはや通用しなくなり、情報化時代に合った教育に現場も変わろうとしている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)
今年7月15日、東京大学発のITベンチャーNicogory(ニコゴリー)は、法律相談に応えるウェブサイトをオープンした。
このサイト、ユーザーが抱える悩みに関する法律情報の提供から専門家への依頼まで、それぞれの事情に応じたノウハウをワンストップ型で提供するものだ。人工知能などを用いて、煩雑な手続きを簡素化することを目指している。
2013年に起業した代表の浦野幸さんは、現役の東京大学大学院生だ。組織や業務システムの最適化を図るエンターアーキテクチャーという分野の研究を行ってきた。これまで法律業務は専門性の高い分野と思われてきたが、浦野さんからすると「法律にこそ規則性がある」として参入した。
それも、「お金がなくて自己破産するのに着手金だけで20万円も掛かるのはおかしい。本来、皆が使えるはずの法律サービスが一部の人のものになっているのでは」と感じていたからだ。
そんな浦野さんが確信しているのは、ニコゴリーのようなサービスが普及すれば、単純な法律業務は機械が取って代わり、10年先を見据えれば法律専門家の役割は大きく変化するということである。
Photo by Takeshi Kojima
機械が人の仕事を奪う──。
英オックスフォード大学が13年に発表した論文は世界に衝撃を与えた。内容は、米国の702の職業別に機械化される確率を示したもので、「今後10~20年で47%の仕事が機械に取って代わられる高いリスクがある」と結んでいる。
論文筆者のマイケル・オズボーン准教授は本誌に「労働市場は急速なペースで変化している。将来の労働市場において成功するためにどのような技術が要求されるのかを知ることはとても困難だが、少なくともどの技術が自動化されるかを推測することはできる」と述べる。
そこで『週刊ダイヤモンド』では、米国の職業別就業人口と平均年収から労働市場を出し、同論文を基に機械が代替する確率を掛け合わせ、「機械による代替市場規模」を算出した。
労働市場の大きなところほど、企業が参入しやすく機械化が進むと考えた。計300兆円に上る市場から職業・仕事別のランキングを示したのが次の表である。