それは、先ほどのイランのほかに、もう1つエネルギー価格を引き下げる要因があるからです。それは、イランの隣国イラクです。イラクも原油大国で、その埋蔵量は世界5位になります。原油生産量でアメリカが世界1位になりましたが、埋蔵量でいえばイランやイラクの足元にも及びません。

 イラクはアメリカとの戦争によって、原油の生産は低迷せざるをえませんでした。イラク戦争後に生産量はだいぶ回復してきましたが、国内の治安がまだよくないこともあって、本来あるべき生産水準までには達していません。イスラム国を掃討して治安が安定してくれば、イランと同様に、原油の供給力は格段に増えてくるだろうというわけです。

 イランばかりでなく、イラクの原油増産も見込まれることから、原油などのエネルギー価格が100ドルを超えて上昇する可能性はほとんどないのです。

 ただし、唯一100ドルを超える可能性があるとすれば、第5次中東戦争のような想定外の紛争が起こった時のことでしょう。中東を二分するような戦乱が起これば、原油の増産もなにもなくなりますから、エネルギー価格の高騰を引き起こす可能性は残っているといえるでしょう。

 とはいえ、今後のアメリカの戦略を考えれば、イスラエル側にはもうつかないでしょうから、第5次中東戦争が起こる可能性は極めて低いと考えられます。

――アメリカがイスラエル側につかないというのは、なぜですか?

中原 それは、今回のアメリカとイランの和解を考えれば、よく理解することができます。アメリカにはどうしても、イランと和解したい事情があったのです。

 アメリカのイランへの譲歩の背景には、中国の経済的な台頭と軍事的な膨張があります。

 経済関連の国際的な機関は例外なく、「中国は近い将来にGDP世界1位になる」と予測しています。たとえば、OECDは「2060年までに中国の1人当たりGDPは現在のアメリカ並みとなり、国全体のGDPでは圧倒的な1位となる」との見通しを発表しているとおりです。

 そうしたことはアメリカ政府も強く意識しています。しかしアメリカ政府関係者は、自分たちが世界ナンバーワンの地位から滑り落ちることを快く思ってはいません。