人工知能やロボット研究の著しい進化によって、私たちの仕事や生活はより便利になってきた。その一方で、これらに私たちの仕事が奪われつつあり、脅威になっているのも事実だ。そうしたなかで生き残るために、優秀なリーダーになる必要性を説かれることが多いが、誰しもがリーダーになれるわけではない。そこで、企業の経営リスクの専門家であり「組織の病気~成長を止める真犯人」を連載中の秋山進さんと、多様な転職志望者と接してきた「転職で幸せになる人、不幸になる人」のクライス&カンパニーの丸山貴宏さんに、普通の会社員が10年後も生き残るための術を教えてもらった。(聞き手/経済ジャーナリスト 宮内 健)
10年後に生き残るには
「使われる人」にならなきゃいけない
――最近、10年後に「消える職業」「なくなる仕事」が注目のテーマとなっています。それほどに変化の激しいビジネス環境のなかで、生き残る人材とはどういう人なのか。今回はリスク管理の専門家である秋山さんと、人材紹介会社の経営者である丸山さんにおうかがいしたいと思います。
秋山 いま10年後、20年後を見据えてどんな人材が必要かという議論をいろんなところでいろんな方が行っていますが、よく見かけるのはリーダーの必要性を説く論説です。日本企業はいままで優秀な兵隊はたくさんいたがリーダーが不在だったのが問題だ、というような。それは極めて正しい主張だと思いますが、世の中で働いている人たちのなかで組織のトップになるような人はそれほど多くはありません。圧倒的大多数の人は組織のなかで働いている人たちですから、現場の最前線や中間管理職で働く人たちがどういう形で、何を考えながら働いていけばいいのかについて、丸山さんと一緒に考えてみたいと思います。
丸山 より現実的な話をするわけですね。
秋山 世の中で「人材はこうなるべき」と主張している方は、何らかの成功者ですよね。ものすごくデキる人である成功者の発言に「なるほど!」と思っても、ほとんどの人はとても真似はできません。昔はモデル向けの服しか示されなかったところに読者モデルが登場し、現実的に自分の手に届く範囲で上を目指すにはどうしたらよいかが示されたように、キャリア論もスーパーマン的成功者の話を聞いてそれに自分を無理やり合わせようとするのはもうやめて、より身近な読者モデルの時代にならないといけないと思うんです。
丸山 その対象がヘッドハンティングではなく普通の転職をするような人たちだとすると、なかなかマスメディアの記事にはなりにくいけれど、自分と同じような立場の人が実際に転職したらどうなるんだろうといった身近でリアルな話は、実は最も知りたいことかもしれませんね。