企業は資格取得を
主たる採用可否基準にしていない

 実務経験が必要であったり、取得者が希少であったりする資格を掲載して、一体何の意味があるのだろうか。取得資格にチェックを入れるのではなく、将来、取得したい資格にチェックを入れるのであれば、まだ意味がある。その学生が何を目指しているか見えてくるからだ。

 しかし、現状は取得資格にチェックを入れる仕組みである。資格取得者がほとんどいない資格を掲載し続ける人材選考支援企業や、それをやめさせようとしない人事部は、実務担当者の言いなりになり、汎用管理することを優先する、管理偏重のトンデモない状況に陥っている。

 そもそも企業は、学生が資格取得している状況で、インターン採用や社員採用の可否を判断しているだろうか。参考にしている企業や職種があることは否定しない。しかし、知り合いの人事部長や経営者らに聞いてみても、資格取得の状況が主たる採用可否基準ではないという明確な答えが返ってくる。私自身の国内大手金融機関、外資系ITや製造業などでの人事・採用経験をふまえても、資格取得の状況を主たる採用可否基準として加味したことはない。

 経営者や人事部長が考えていることと、現場で行われていることが深刻なギャップを生んでしまっている実例である。このことは、選考支援企業の実務担当者と、選考支援企業とコンタクトする企業人事部の実務担当者が、経営者や人事部長が考えていることを体現しようとすることよりも、実務的な利便性を優先してしまっている事例ともいえる。そして、経営者や人事部長はこれをハンドルできていないのである。

 中には、不要な資格を掲載することの違和感を指摘した人事担当者もいたに違いない。自社の採用対象に従って、資格の絞り込みや追加を要望した企業もあったろう。しかし、「汎用のテンプレートですから御社用にカスタマイズできません」という定型句が返ってきたであろうことが、想像に難くない。

 さらに、このような汎用なシートは、自社の考え方にそぐわないので、独自のエントリーシートを作成し入力させようと現場に打診したケースもあったに違いない。しかし、「現在の人事部のリソースでは対応できません、多少合わなくとも選考支援企業に外注するしか方法はありません」という担当者からの強いリアクションを想像してしまう。

 こうした無意味な項目を学生に問う一方、本当に経営者や人事部長が学生に求めている重要事項が無視されているエントリーシートでは、その企業にとって有意義な採用はできない。外部業者に丸投げするリスクを、人事部はもっと重く受け止めた方が良い。