新卒会社説明会で研修!?
潜在能力の高い学生を集める秘策
2016年4月入社の大学新卒採用は、10月1日の内定解禁に向けて、各社ともに選考プロセスを進めている状況だ。リクルートキャリアの「就職白書2015」によれば、98.7%もの企業が採用プロセスにおいて、会社説明会を実施している。
会社説明会でビデオを使用したり、自社のイメージを訴えたり、双方向のコミュニケーションを図ったりする企業が増加している。同白書を読み込むと、Webでの説明会を実施している企業も30%にのぼるなど、各社ともに工夫を凝らしていることが分かる。
しかし内容は、会社方針や業務内容、社風などを紹介する、文字通り会社説明の範囲にとどまっているようだ。
そのような中にあって、会社説明会の内容を大幅に変更。いわゆる会社説明を最低限にとどめ、大半の時間を、学生の能力開発のための演習にあてる会社がある。採用したい人材の資質要件と、候補者のそれの適合度を高め、応募者数を増やし、さらに応募者のレベルを飛躍的に上げている。事業統合したN社である。
「会社説明会で演習?」。疑問に思う人はたくさんいるかもしれないが、N社の採用・育成課長O氏には、確固たる戦略があった。
O課長にとっては、人事部着任後、初めて手がける新卒採用プロセスであった。事業統合の効果をさらに高め、さらに飛躍的に業績伸展させるために、N社のバリュー(社員が体現していく価値)である、柔軟性、顧客志向、チャレンジ精神といったジャンルで、潜在能力が高い学生を採用することが必須であると確信していた。
従来の方法だと、エントリーシートや面接で、潜在能力を見極めるわけだが、自身の過去の面接経験をふまえると、見極めの確度に限界があると思われたし、そもそも会社説明会や面接に集まってくる学生の母集団の潜在能力を高める必要があると考えていた。
しかし「柔軟性、顧客志向、チャレンジ精神の潜在能力が高い学生に集まってほしい」と、会社説明会の案内でいくら書いても、効果が限られていることは、これまでの経験でわかっていた。
「潜在能力が高い学生とは、潜在能力を高めたいと考える学生のはずだ」。そう考えたO課長は、そうした学生を集めるためには、潜在能力を高める機会を提供することをアナウンスすればよいとの発想に至った。そして、会社説明会の場で、N社が重視している柔軟性、顧客志向、チャレンジ精神を高める演習を実施することを結論づけたのである。