ニッチ市場で高シェアを握り、営業利益率10%超をたたき出すクラレ。1月に就任した伊藤正明社長に強さの秘密と課題を聞いた。

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──高利益率を達成するため、ニッチ市場を狙うこと以外に行っていることはありますか?

 売り上げだけでいえば、私が入社した1980年と比べて、クラレってあんまり大きくなってないんですよ。苦労して苦労して事業の縮小撤退を進め、会社の中身を入れ替えてきたからです。

 80年は売り上げの80%以上が祖業の繊維だったんですが、これがいまやもう18%しかない。当時を振り返って和久井(康明元社長)なんかは「砂時計のようやった」と。増やそうと思っても、ボロボロ売り上げがこぼれてく。

 そんな中で私ども、2000年代半ばに「事業再評価基準」っていうのを作ったんですよね。

 例えば、前年度のオペレーションキャッシュフローが赤字とか、ROAがマイナスっちゅうような業績が思わしくない事業は、「体質改善事業」や「事業性検討事業」にするよ、と。それでそれぞれ改善策、再構築策を作って、経営会議で「あかん、やり直せ」と言われたり、「これでは駄目やね、もう縮小撤退だね」と、こうなったり。

 もちろん将来性も含め、会社にとって続けねばならない事業かどうかの判断は別途しますけど、自動的にこういう議論がされるような仕組みをつくっているわけです。

──現状、食品包装材に使われる高機能性樹脂「エバール」などを含むビニルアセテート事業が営業利益の約7割を占めていますが、第二の柱が必要なのでは?