衆議院本会議で6日、2つの公務員制度改革法案の趣旨説明が行われ、それらの審議が始まった。
当然のことながら、2つの法案の1つは、政府案である。鳩山由紀夫首相は「自信を持って国民に訴えている法案だ」と胸を張る。しかし、実際には、国家公務員の総人件費の2割削減など、政府・与党の従来の主張を実行に移す施策は、ひとつも盛り込まれなかった。
加えて、省益優先の行政機構改革の切り札として設置する計画だった内閣人事局も、各省庁からの組織や機能の移管が見送られ、廃案になった麻生太郎内閣案より内容が後退した。
一方、そうした骨抜きの政府案と対象的なのが、野党となった自民党の国家公務員法改正案である。同法案は、みんなの党との共同提案だが、麻生内閣当時、骨抜きと批判されたポイントを修正しただけではない。なんと、天下りのあっせん禁止を徹底しようと、新たに刑事罰まで設ける意欲的法案に仕上がっているのだ。
いったい、なぜ、両法案の間に、これほど大きなコントラストが生まれたのだろうか。その背景を検証してみよう。
内閣人事局、幹部公務員制度で
政府案に差をつけた自民党案
まず、政府案と自民党案を比較してみよう。主なポイントは4つある。
第一は、長年にわたって「省益優先」と揶揄されてきた各省庁による縦割り行政の行き過ぎ是正策として、内閣総理大臣が幹部公務員の人事を一元的に行うために設置する内閣人事局の内容だ。
ちなみに、同局は、2008年に成立した国家公務員制度改革基本法で設置が決まっていた重要組織である。
実際には、これまで各省庁に所属していた国家公務員のうち幹部公務員(約600人)の人事を所管するものとなる。
そこで大切なのが、人事院の級別に公務員定数を定める権限や採用試験・研修を企画立案する権限、総務省の機構・組織別に定数を定める権限、そして財務省の直接・間接的に公務員給与を定める権限などを一括して内閣人事局に移すことだ。権限の集中によって、パワフルな内閣人事局を誕生させることが、改革の第1歩なのである。
ところが、情けないことに、政府案は、麻生政権案で盛り込まれていた人事院と総務省の権限の移管を放棄してしまった。同案では、内閣人事局はほとんど権限を与えられず弱体化。できあがった定数や給与の枠内で、幹部公務員の瑣末な人事配置案の作成と調整を担うこじんまりした組織に成り下がっていると言わざるを得ない。