オバマ政権が1年前に宣言した米国のブロードバンド大国化計画がついにベールを脱いだ。

 連邦通信委員会(Federal Communications Commission、FCC)が議会(下院)に提出した「全米ブロードバンド計画(National Broadband Plan)」がそれだ。今後10年の間に全米の1億世帯に毎秒100メガビットの超高速通信環境を提供することを目標に掲げている。これは、現在の全米平均の25倍にあたる高速通信環境という。

 この計画の原点は、リーマン・ショックに代表される経済・金融危機への対応として、通信インフラの整備事業を展開する財政・雇用政策である。

 しかし、今回の発表をみると、この分野で先進国の地位にある日本や韓国を追い越し、通信インフラレベルでの米国の国際競争力を回復しようという意図も露骨になっている。

 それだけに、自分たちに有利な分野をいかに維持・拡大して競争力を強化するか、あるいは苦手な分野をどう育成していくのか、日本も真剣に国家としてのインターネット戦略を再検証する時期を迎えているのではないだろうか。

300万~400万人の雇用を
確保する国家戦略

「全米ブロードバンド計画」は、オバマ政権が2009年2月17日に成立させた「米国再生・再投資計画」で、FCCが所管して策定し議会に提出することを義務付けていた国家戦略だ。

 主な柱は、科学技術による経済の構造転換、クリーンで効率的なエネルギー、インフラへの大規模投資を通じた経費削減と雇用維持・創出など。

 財政的には7832億ドル(うち、いわゆる真水部分は3100億ドル)を投じて、300万~400万人の雇用を維持・創出することを目指している。

 FCCは「全米ブロードバンド計画」の策定にあたって、実に36回の公開ワークショップを開催したほか、31回のパブリックコメントの募集を行い2万3000件のコメントを集めて作業を進めたという。