9月25日、ホワイトハウスで米国のバラク・オバマ大統領(右)と会談する中国の習近平国家主席。この訪米が、中国人民元のSDR入りを後押しするか 
Photo:新華社/アフロ

 東京・有楽町駅近くのタイ料理店で、ピリ辛のタイ式ラーメンをすすっていたら、店の片隅に不思議な額縁が飾ってあるのに気が付いた。

 3年前の10月に東京で開催された国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会の事務局から贈られた感謝状だった。同店が総会参加者を「SDR」でもてなしたことへの謝意が表されていた。

 IMFのSDRといえば、特別引出権(Special Drawing Rights)のことではないか。IMF加盟国だけが使える特殊な“国際通貨”を、なぜこのタイ料理店は取り扱うことができたのか。意味がよく分からない感謝状だった。

 当時の米「ウォールストリート・ジャーナル」紙に関連記事があった。同総会には世界から約1万5000人が集まった。彼らの食事に対応するため、事務局は協賛レストランを募集した。協賛店に総会参加者が行くと、特別な値引きやサービスを受けることができたそうだ。つまりここで言うSDRとは、特別割引権(Special Discount Rights)のことで、本物のSDRに引っ掛けたしゃれの名称だったのである。

 ところで、ここにきてその本物の方のSDRに国際的な関心が集まっている。5年に1度の通貨バスケットの構成見直し時期が近づいており、中国人民元が採用される可能性が高まってきたからだ。現在の構成通貨は、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円だ。それらを英「フィナンシャル・タイムズ」紙は最近の記事で「通貨のエリート」と呼んでいた。

 中国当局は人民元のSDR入りを切望している。単に名誉のためだけではない。SDR構成通貨であり続けるには、金融システムに市場メカニズムを導入していく必要がある。中国政府は、それを“外圧”として利用しながら、国内の改革を推し進めたがっている。

 このため、最近の中国はIMFが示す市場改革のアドバイスに素直に従ってきた。8月11日の人民元為替レートの値決め方式の変更がまさにそれだった。