現地化の徹底で途上国BOP市場を開拓する味の素。その強さの源泉と今後の戦略を、伊藤雅俊社長に聞いた。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木豪)

味の素 伊藤雅俊・社長
Photo by Masato Kato

 創業101年目となった2010年は、次の100年に向けたビジョンを策定した。その中で海外食品事業の拡大は柱の一つだ。

 しかし、新興国や途上国を目指すのは今に始まったことではない。池田菊苗博士が世界で最初に昆布の成分からうま味を発見したのが1908年。翌09年には創業して「味の素」を発売、17年にはニューヨークに進出している。今日とは比べようもないくらい困難だっただろうが、市場を求めてタイ、フィリピン、ブラジルなど新興国にも50年前に進出している。先人たちの苦労と先見性には頭が下がる思いだ。

 このように味の素には開拓者精神と海外志向がDNAとして刻まれている。すでに130ヵ国で事業展開をしているが、それを支える生産拠点や物流網など、インフラはかなりのものがあると自負しているので、それらのハードと融合させ、エリアや商品展開の拡大を図りたい。

 うまいものを作ろうとする会社は無数にあったが、「なぜうまいのか?」と考えたのは味の素だけだ。その成果であるうま味は、味の素が海外展開に成功した大きな要因で、今後もUMAMIとして世界に伝えることが発展のカギだと考えている。