日韓関係が悲劇的に冷え込んでいる。日韓首脳会談は2012年5月を最後に開催されておらず、かつては頻繁に行っていたシャトル外交は、今となっては夢のまた夢だ。なぜ、日韓関係は悪化してしまったのか。『週刊ダイヤモンド』10月31日号の第一特集で、「ビジネスマン6000人に聞いた日韓 本当の大問題」と題して深層を探った。ここでは、日韓特集のスピンオフ企画として、2010年から12年まで駐韓国大使を務め、日本大使館前への慰安婦像設置や李明博前大統領の竹島訪問を大使として経験された武藤正敏氏に日韓関係悪化の原因と今後の展望を聞いた。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)

国民感情は移ろいやすい
悪化の元凶は政治とメディア

むとう・まさとし
1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」(悟空出版)がある。

――「韓国人は反日」というイメージを日本人の多くは持っていますが、実際に韓国人は本当に日本を嫌っているのでしょうか?

 今でも世論調査をすれば、5割~6割くらいの人が「日本を嫌い」と答えます。数字だけ見ると「反日」ということになるのですが、嫌いの程度はずいぶん昔と変わっているように感じます。

 かつて1980年代までは、日韓の間で教科書などの歴史問題が起きると、日本人は韓国の街を歩けない位、危険な状況でした。

 しかし、今は街を歩いていても危害を加えられるようなことはありません。大使として駐韓していた時、私はよくテレビに出ていたので街中で韓国人に声をかけられることがあったのですが、せいぜい「独島(竹島)問題はこれからどうなるんだ」と聞かれるくらい。現在は、心の底から日本を嫌っている人は少ないと思います。

 ただ、韓国社会において反日という前提はこれからも変わらないでしょう。教育もメディアもこれまで反日一本で通してきたので、韓国が日本を客観的に見られないという点は問題だと思います。