足もとで取り沙汰されている欠落マンション問題、過去の耐震偽装マンション問題などを思い浮かべ、「高いローンを負担して住宅を購入することにはリスクが多い」と思う人もいるかもしれない。

 しかし、たとえば地震の度に改善される耐震構造基準に沿った新しい物件と、それ以前の物件との間に大きな品質差が生じることなどは、誰しも常日頃から容易に想像がつくことであり、皆それを織り込んで自分の住宅プランを考えている。だからこそ、住宅を購入する人は後を絶たないのだ。

持ち家と賃貸の論点は
実は別のところにある

 それと同じことで、たとえばアパートを自宅として買う人がいないように、居住品質や設備水準は賃貸と分譲では大きく異なる。よしんば「賃貸物件のほうがリスクが低い」と思う人が今後増えたとしても、分譲物件に住み慣れたファミリー世帯のニーズに耐える賃貸住宅が、日本にどれほどあるだろうか。

 一般論として、自分が住まずに他人に貸す物件の構造や設備のグレードはコストミニマムにしがちだ。それならば、同様にコストミニマムでやるにしても、自分の好きなようにリフォームできる持ち家は、賃貸よりも有力な選択肢になる。それが豊かな生活を送る人生の礎となるからである。

 冒頭で述べた通り、筆者は「持ち家は賃貸に勝る」と思っている。ただし本当に大切なことは、持ち家であれ賃貸であれ、いつでも住み替えられる選択肢を持ち、機動的に行動できることだと考える。人生のリスクはすべて予期することができないがゆえに、持ち家はいつでも売れる物件を選ぶことを薦めている。

 もちろん、不動産価格が下落すると見込まれるときは持ち家を売却し、賃貸に住むことも有効な選択肢になると思う。筆者はそうしたアラートを、連載第6回でも鳴らしている。

 また、今後国には分譲と賃貸が同じ品質になるような税制上の諸制度の整備などを進めて欲しいものである。減価償却、リフォーム後の建物評価、投資促進税制などが変わるだけで、世の中の品質や資産価値に対する考え方は大きく変わるであろう。それが日本に住む人の生活水準を高め、コスト以上のベネフィットをもたらすことになることを祈念してやまない。