女性が「生理的にムリ」と感じる男性の条件で必ず挙がるのは、清潔感のなさ。そうはいっても、女性が求める清潔感がどんなものか、多くの男性はわからないだろう。高級なスーツを着ていたところで、清潔感がなければ女性は見向きもしないのだ。
女性が清潔感を感じるのは、実は肌の状態によるところが大きい。女性がモテたくて美肌を追及しているように、男性も美肌がモテる条件なのだ。
今回は、六本木のアオハルクリニックで院長を務める皮膚科医の小柳衣吏子先生に、男性の美肌についてお話を伺った。
(取材・構成:大畠利恵、トレーナー:金井俊希、ヨガ写真:宇佐見利明)
女性は男のこんなところを見ている
――僕も数年後には40代に入り、下り坂世代になります。男性が若さを保つためには、どうすればいいのかを真剣に考えるようになりました。
小柳 男性が若さを保つために必要なのは、清潔感だと思うんですよね。顔つきは変えられませんが、清潔感は努力すれば得られるものです。
太っていたり肌が脂ぎっていたら、女性は寄ってこなくなる。顔が皺やシミだらけだったり、ガサガサ肌だったり、毛深かったりしたら、女性は清潔さを感じられないのです。女性が寄ってこないと男性は余計に気を遣わなくなって、さらに清潔感がなくなるという、負のスパイラルに陥っていくと思うんです。
――僕もたまにここに来て、施術をやってもらっているのは、まわりの女性から嫌われないようにするためでもあるんです。僕は地元が湘南なのでサーファーの友だちが多いのですが、みんな日焼けしすぎておじさんみたいになっちゃうんですよね。小栁先生に太陽をあまり浴びないほうがいいとか、いろいろ教えていただいて、やはり男性でもケアをしないとダメなんだなと思いました。
小柳 当院の患者さんは女性が9割で男性は1割なんですが、男性は意識が高い方が多いですね。それも奥さんとか恋人に連れられて来るんじゃなくて、自主的にいらっしゃるんです。ジムやヨガスタジオで汗を流した後で、ここにきて施術される方もいらっしゃいますし。体はケアすると必ず応えてくれますし、自分を可愛がれば人からも可愛がられる人になると思いますよ。
――男性の患者さんは、どういう目的が多いんですか。
小柳 若さを保ちたいと考えている方も、「大事な人に会うんだよね」っておっしゃる方もいれば、ズバリ「モテたい」とおっしゃる方もいらっしゃいます。「このシミを家族に取れって言われたんだよね」というところからスタートする方もいらっしゃいますね。
――僕もやっていただく施術がいつも気持ちよくて。
小柳 リラクゼーション的にも、お肌をタッチするって非常に大事なことなので、これからタッチ医療みたいなのが来るんじゃないかなと思います。触れるだけで幸せホルモンのオキシトシンが分泌されるので、それが若返りに役立ってくるし、元気のもとになるということです。
以前、流行った本でもありましたけれど、見た目ですべてが決まりますよね。それこそきれいな男性は仕事でも有利に立てると思います。
ヨガはすぐに効果が出る
――小柳先生は、私が運営するヨガスタジオのスタート時から通われていらっしゃいます。最初ヨガがいいと聞いたときは、どう思いましたか。
小柳 正直申しまして「ヨガはスポーツじゃない」と思っていました。元々テニスをやっていましたし、ジムでエアロビクスとかするのが好きだったので、ヨガはまったく運動量がないし、ストレスが逆にたまるのでは、と思ってたんです。私はアンチエイジングの専門医でもありますから、ヨガやピラティスは心拍数や血圧が上がりすぎないので、ハードなスポーツよりもアンチエイジングにはいい、ということは頭ではわかっていたんです。それでも、最初は半信半疑で。ホットヨガを体験したら、全然ポーズもとれないし、つらいので「これはなんだろう」と驚きました。できなくてつらいものには立ち向かっていくタイプなので、ならやってみようと続けているんです。
――ヨガを始めて、どれぐらいで効果は出てきましたか。
小柳 効果はすぐ出ました。気分がすっきりしたんですね。仕事柄、けっこうストレスがたまりますし、仕事をしていると、24時間仕事脳みたいになってしまうんです。ずっとそこから抜け出せないでいるんですけど、ヨガ教室のときは完全にすぽっと抜けられるので、非常に気分もリラックスできて、本当にありがたい空間だなと思ってます。
――それは、普通のスポーツをやっているときの爽快感とは、また違う。
小柳 もちろんテニスをやっていると爽快なんですけど、ヨガは相手のいるスポーツとはまた違う感覚です。「自己を見つめなさい」ってよくインストラクターの先生もおっしゃいますけど、なんとなくそこに近い感覚は得られているんじゃないかなと思います。テニスをやっているときに、あまり自分の内面のこととか、股関節や肩関節とかインナーマッスルのことまで考えませんから。
――普段、お仕事で忙しいと、なかなかそこまで自分の内面まで見つめられる時間は持てないですよね。
小柳 そうですね。内面を見つめすぎて逆にいやな気持ちになったりしますし。普段、診察室に何時間もいたり、家でも何時間もデスクワークしていると、頭の中がガーッと熱せられる感じになるんですけど、ヨガをするとそれがクールダウンして客観的に自分を見つめられるようになる気がします。
――身体面での変化はありましたか。
小柳 自分で言うのもなんですけど、ヒップアップできたかなと思います(笑)。疲れづらくもなりましたね。
汗をかくと親父臭も消える!?
――僕もホットヨガをやるんですけれど、1回やっただけで2キロぐらい痩せるときもありますね。
小柳 すごいですね。
――汗を大量にかくのは、肌にどういう影響を受けるんですか?
小柳 代謝を促すにはいいと思いますよ。ただ、ちょっとネガティブなことを申し上げると、汗はかいた瞬間は酸性で、時間がたつとアルカリになってしまいます。肌は酸性に保ったほうがいいので、汗のかきっぱなしは肌荒れの状態になりますから、すぐにシャワーで洗い流したほうがいいですね。
やはり何もしてない人より運動している人のほうがデータ的にも長生きになる、健康寿命が長いといわれるように、体の中が元気であると肌にも必ず反映されます。「肌は健康の鏡」ともいわれていますので、身体の内側からキレイになるヨガはいいと思います。
――男性はドライサウナが好きな人が多いんですよ。すごい高温で、もう10分ぐらいしか入れないようなサウナで。僕も、昔はドライサウナで汗をたくさんかいて、水風呂にダーンと入らないと、やった気になれないところはありました。最近は、あれは干からびてるんじゃないのかなって感じるんですよ。
小柳 そうですね。私もジムでドライサウナは入ったことがあるんですけど、肌がヒリヒリするんです。ヒリヒリするのはいいことじゃないので、ある程度ウエットな状況のほうがいいと思います。
それにしても、最近は汗をかけない人が多いですね。当院はインディバという高周波の治療器があって、深部加温をするんですけども、スポーツしてない方は全然汗をかかない。どこか体調が悪いことを「不定愁訴」というんですけど、そういう方は眠れないとか、腰痛があるとか、いつもイライラしているとおっしゃいます。普段から汗をかいて、代謝を向上させておくのが不定愁訴の予防になるんです。
――よく汗腺が開くというじゃないですか。あれは、ほんとに開くんですか。
小柳 開きますね。鍛えてないと汗を流せないと思うし、代謝してないと変なニオイの汗をかくともいいます。いわゆる加齢臭です。男性も汗を普段から流しておくと、下り坂になってもニオイが気にならなくなると思います。
簡単そうに見えるポーズでも効果がある
――先生のお気に入りのポーズってありますか。
小栁 ダウンドッグは最近好きです。全身気持ちいいなあって思います。ヨガをやる前、雑誌に載っていた写真を見た時は、「えっ、これ運動?」みたいな気がしてたんですけれど、実際にやってみると、ちゃんと両手の平にも力が加わって、お尻を後ろのほうに高く上げるようにすると、全身にピーンと電気が走るように力が入るので、「ああ、気持ちいい」ってなるんですよね。
――それはすごいですよ。あれはヨガの基本ですよね。僕なんか肩とかすぐパンパンになっちゃうんです。ベンチプレス200キロ上げろって言われたほうが楽です(笑)。
小栁 ものすごい関節を使う感じがしますよね。股関節を開けるとうつうつとした気分がなくなりますよってインストラクターの方に教わってから、股関節を伸ばすポーズも好きになりました。
ダウンドッグから起立の姿勢になるポーズがありますよね。私、心肺機能があまり強くないらしく、ヨガを始めたばかりのころは立つと起立性低血圧になっちゃって、全然できなかったんですね。最近は立つところまでできるので、何歳でも訓練すれば体は応えてくれるのかなと思います。これからもヨガは毎週通い続けます。
ダウンドッグ(下向きの犬のポーズ)は、四つん這いの状態から両膝を持ち上げて、そこから腰を高く伸ばした山のようなポーズのこと。伸ばす時は両足を地面につけたまま、腕も膝もまっすぐ伸ばすので、簡単そうに見えて男性にとってはかなりハードなポーズである。肩こりを緩和し、体幹を強化する効果があるので、ぜひ試してほしい。