ゴルフ好きの方は、飛距離を伸ばそうと筋力トレーニングに励んだり、練習場に通って正しいスイングを身に着けようと悪戦苦闘しているだろう。あるいは、高いゴルフクラブを何本も購入し、飛距離を伸ばすと謳っているグローブやシューズ、ソックスまで完備している方もいるかもしれない。
それでもスコアを縮められないのは、おそらく努力の方向性が間違っているから。実は、お金をかけなくてもゴルフを上達できる方法がある。その秘策とは何なのだろうか。
(取材・構成:大畠利恵、トレーナー:金井俊希、ヨガ写真:宇佐見利明)

ゴルフが上達しない3つの要素

 ゴルフに必要なのは、パワーではないとよく言われています。それは女子のプロゴルフ選手が、素人の男性より遠くに飛ばせることからも分かるでしょう。力で言えば、素人であっても男性のほうが強いのです。

力任せにスイングしても、飛距離を伸ばせるとは限りません。本番でめちゃくちゃ張り切って力いっぱいスイングしたら、あまり飛ばないのに、本番前日に「練習しておくか…」と何気なくスイングしたら、うまく遠くまで飛んだ。そんな経験はないでしょうか? これはうまく余計な力が抜けたからです。

力に頼らないのであれば、何に頼ればいいのでしょう。それには3つの要素が考えられます。

(1)柔軟さ

身体と筋肉の柔軟さは、年齢と共に衰えていきます。ゴルフは連動性が必要です。下半身の力をうまく上半身に伝えることがスイングスピードにも影響してきます。ただ、やみくもにスイングを速くしようと上半身に力が入っては、スイング練習をすればするほど上半身の張りが強くなり、肩甲骨まわりの可動域が狭くなってしまう可能性が出てきます。

それに伴い、崩れたフォームでスイングを繰り返すことで、腰回りはもちろん、股関節への負担が大きくなり、膝を痛めることにもつながりかねません。

プロとアマチュアの一番の違いは、身体の使い方にあると思います。筋力トレーニングをする際も、ターゲットとする筋肉を意識することはもちろん、関節可動域をしっかり確保し、スイングにどのようにつなげていくのかを意識しながら進めていきます。柔軟性を保ちながら、筋力アップを図り、より全身を連動させた力強いスイングを作り上げていくのです。

つまり、ただ重たいものを持ち上げられるだけでなく、柔軟性を保ち、そのしなやかなバネを利用できる身体だからこそ、キレのあるスイングができるのです。

(2)バランス

体幹というのは、手足や頭をのぞいた体の胴体部分のこと。体幹筋が弱いと軸がぶれて、ゴルフでもまっすぐ飛ばせません。

体幹にはアウターマッスルインナーマッスルがあります。普通の筋力トレーニングでも、アウターマッスルはもちろんのこと、インナーマッスルも自然と鍛えられていますが、どうしても意識はアウターマッスルに行きやすいため、アンバランスになってくることがあります。

インナーマッスルは家でいう、基礎・骨組みのこと。いくら立派な屋根や壁を作っても基礎が壊れてしまっては、いつかは崩れてしまいます。そのため、そのバランスが重要になってくるのです。

また、コースに出るとさまざまな状況下でショットを打たないといけなくなり、自身のバランス機能を高めておくことで、つねに安定したショットを打つことが可能となります。

(3)自律神経

「ゴルフはメンタル面が90%、残り10%もメンタルだ」

これは、ジャック・ニクラスのスウィング・コーチであるジム・フリックの残した言葉です。

ゴルフが難しいのは、本番で打ち直しができないところ。練習でどんなにうまく打てていても、本番でミスショットをしたらそれですべてがパーになります。

コースに出た時にOBや池ポチャをしてしまったら、「今日はもうダメだ」と投げ出してしまいたくなる日もある。その後のホールも調子が乗らず、散々なスコアになったりします。

しかし、プロでも大会でOBや池ポチャをしています。木の上に乗ってしまったボールを、木に登って打ち、グリーンに乗せた選手もいました。失敗したときにそこで崩れていく選手もいれば、素早く持ち直して優勝している選手もいる。その差は技術や体力ではなく、メンタルの強さだと考えられます。

何かトラブルが起きると気持ちも動揺し、自律神経が乱れます。そうなると全力を出せません。動揺せずに平常心を持つことは難しいのですが、乱れた自律神経を調節することはできます。

私が勧める3つの悩みを解決する方法

 私はパーソナルトレーナーとして、昨年パリーグ新人王で2年連続二桁勝利をあげた石川歩投手や、早実のスーパー1年生清宮幸太郎選手など、多くのスポーツ選手の肉体改造に携わってきました。機材を使ったトレーニング方法についても指導していますが、それだけでは体の柔軟性とインナーマッスル、自律神経の3つを高めるところまではいかないことも感じていました。

ヨガに出会ったとき、その3つを同時に解決できると気づいたのです。

ヨガはストレッチの源流と言われ、ストレッチはヨガを解体してつくった動きです。したがって、ヨガは体を柔軟にする効果があるのは言うまでもありません。体が硬いと無理だと思うような難しいポーズもありますが、ヨガを続けるうちにそこまで体が柔らかくなっていくのです。

また、ヨガは姿勢を重視します。骨盤のゆがみを直すようポーズをとるので、周辺にある筋肉のインナーマッスルを強くする効果があるのです。体幹を強化するポーズも多く、やっているうちに自然とインナーマッスルが鍛えられます。バランスを取るポーズが多いので、三半規管にも効果があります。

そして、深い呼吸を繰り返すうちにメンタルをコントロールできるのです。これは深い呼吸が自律神経に影響するからでしょう。

自律神経のバランスを保つことが、平常心を保つことになると科学的にはわかっています。しかし、それをどうすればいいのかというところまでは、なかなか解明できていません。何百年という伝統のあるヨガは、その効果や知恵がずっと受け継がれてきたので、その効果を信頼できるのです。

現在、多くのプロのゴルフ選手がヨガを取り入れています。それは3つの効果があるとわかっているからではないでしょうか。タイガー・ウッズがヨガをやっているのは有名な話です。歩くときにピンと背筋を伸ばし、ゆっくり歩くのは深い呼吸をして自律神経をコントロールし、最高のパフォーマンスを引き出しているからだといわれています。

 そして、心を鍛えることはビジネスにも必ず役立ちます。

 ゴルフの本番で打ち直しができないように、プレゼンや交渉などの大事な場面でもやり直しはできません。「ここぞ」という場面で本領を発揮できるように、ヨガでメンタルを鍛えておけば、どんなときでも勝てるビジネスマンになれるでしょう。

ゴルフコンペで勝ちたいときのヨガ

今回は、ゴルフをする前におススメのポーズをご紹介します。コンペでいい結果を出したいときはぜひ試してみてください。

肩胛骨周りを動かすことで競技力をアップさせる効果と、胸を開いて深く呼吸をすることで集中力を高める効果があります。足を伸ばしたまま前屈することで腿の裏が伸びますし、一つの動作で色々な効果が期待できるポーズです。

正式なポーズでは背中に回した両手で合掌しますが、体が硬い人には難しいと思います。ここでは簡単にできるヴァージョンをご紹介します。

 また、このポーズ以外に呼吸も気持ちをコントロールする大事な要素です。

 ミスショットで動揺したときは「ナーディ・ショーダナ」を、「ここぞ」という決め時では「カパラバディ」をするなど、今までご紹介した呼吸法をうまく使い分ければ、勝利を導けると思います。

(1)両足を大きく前後に開き、背中に両手を回して左右の肘をつかみます。このとき、胸をグッと開いて、肩胛骨を寄せるように意識してください。
(2)息を吐きながら、腰を正面に向けたまま上体をゆっくり前に倒します。両膝を曲げずにピンと張ったままで、後ろの足が上がったりしないようにしっかり両足の裏で踏みしめましょう。背筋と両脇腹をしっかり伸ばすのもポイントです。
(3)この姿勢のまま鼻からゆっくり息を吸って吐くのを5回繰り返します。息を吸いながらゆっくり上体を起こし、足を変えて(1)から繰り返します。これを1〜3セット繰り返しましょう。

私が運営しているスタジオで、11月6日(金)に男性限定のヨガ体験教室を開催することになりました。テーマは、「今求められる闘う男性のためのヨガ」。女性に交じってヨガをすることに抵抗を感じる方は、この機会にぜひ体験してみてください。

(お問い合わせ:デポルターレヨガ 03-6427-6724)