エリート社員に急増する
「非うつ病性うつ病」とは

 社のエリートだと思われてきた優秀な会社員が、長期間休職した末、退職して地域の中に引きこもっていく。

 休職期間中は、人事担当者が彼らを会社の健康管理室や街の開業医に紹介し、「うつ病」などの診断名で、休職扱いになることも多い。しかし、その実態は、現代型のうつ病である「非うつ病性うつ病」、あるいは、新たなタイプの「パーソナリティ障害」ではないかとも言われている。

このように最近、就労者から、新しい「引きこもり」層が生まれる背景には、企業側の対応上の問題についても取り沙汰されている。

「会社を休職し、退職していく人たちに話を聞くと、皆、社会が怖いと言う。現実の世界は、脅威に満ちていて、自分に迫害を加える。社会は、自分の自尊心を傷つける対象なんですよ」

 こう解説するのは、『パーソナリティ障害(人格障害)のことがよくわかる本』(講談社)などの著書がある、東京都渋谷区の「市橋クリニック」の市橋秀夫院長。

 プライドが高くて、傷つきやすい人たちが増えてきている。同時に、ちょっとしたことでキレやすい傾向なのも、最近の特徴という。

 市橋院長は、こう続ける。

「企業に対するロイヤリティが低くなってきていて、自己中心的な考えに基づいて行動する人たちが多い。上司との親密なコミュニケーションを拒否する。あるいは、同僚間でも孤立する。そういう人たちが、会社内で多数派になってきているんです」

優秀な人ほど要注意?
一度の挫折で「引きこもる」人々

 そんな彼らに話を聞くと、子供時代、判を押したように、似たようなストーリーがあるという。

 中学生くらいまでの成績は、いつもトップクラス。ところが、有名進学校に入り、初めての試験で、順位が中の上くらいに落ちてしまう。有名進学校で中の上であれば、本来ならいい成績のはずなのに、その人にとっては、ものすごい衝撃を受けることになる。