「あなたはもともとお金を受け取った途端、行方をくらましたのだから、そして結婚の約束をした途端、金の無心をしてきたのだから、はじめから騙すつもりで彼女に近づいたのではないか。交際開始、求婚、同棲先の確保などは、彼女を『信じ込ませるための策略』であり、金を巻き上げるために当初は信用に値するような言動をとり続けたのなら、詐欺師だと罵られても文句は言えないのではないか!」

 広樹さんはこのように思いのたけを男にぶつけたのです。とはいえ、男はまさか彼女の夫(広樹さん)が待ち構えているとは思っておらず、心の準備もお金の準備も、そして理論武装もしていなかったので、とにかく急場をしのぐべく、「あること、ないこと」をぶちまけてきたのです。まず男は「そんな大金もらっているはずがないだろう」と逆上します。

「こっちは振込の明細を持っているんだ。これは客観的な証拠だし、確実に証明できるのだから、言い逃れの余地はないだろう」

 広樹さんも負けずに言い返したのですが、男は全く怯むことなく、別の切り口で言い返してきたようです。

「結婚するのだから返さなくても良いと思っていた」

 男はこんなふうに自分勝手な解釈を披露して責任逃れを図ろうとしたようです。ところで妻が「貸したお金」、男が「もらったお金」だと言い張った場合、どうなるでしょうか?

今回の100万円は
贈与なのか借用なのか?

 今回のように金銭の授受を行った場合、法律上の贈与、借用どちらに該当するのかを確定させるのが先決です。まず贈与ですが、民法549条によると自己の財産を無償で与える意思を示した場合のみ、前述の金銭授受は贈与に該当するようです。しかし、妻は「タダであげる。返さなくてもいい」という旨の言葉を発したことはなかったようです。

 一方でどのような場合は金銭消費貸借契約(以下、借用)になるのでしょうか?法律上、不要式契約(片方の意思表示があれば十分で正式な契約を交わさなくても効力が発生する契約のこと)に分類されます。

 今回の場合、前述の通り、妻は男に対して「私のほうから足りないぶんお金を貸します」と伝えているのだから、確かに両者間で借用書等を締結していませんが、今回の金銭授受は贈与ではなく借用だということは誰がどう見ても間違いありません。