ゲームオーバーの時に流れる「物悲しいメロディ」作曲者は誰?写真はイメージです Photo:PIXTA

テレビコマーシャルやゲームのBGMとして使用されることが多いクラシック音楽。ゲームオーバーの時のメロディや「太田胃散」、「オー人事」といったCMでは、クラシックの曲を効果的に使用して強烈なインパクトを与えている。私たちの耳と心に残る、身近なクラシック音楽を紹介する。※本稿は渋谷ゆう子著『生活はクラシック音楽でできている』(笠間書院)の一部を抜粋・編集したものです。

“ゲームオーバー”の曲は
ショパンの「葬送行進曲」冒頭

 テレビ番組の中だけでなく、実はテレビゲームの中にもクラシック音楽が効果的なBGMとしてたくさん使われています。

 ゲームが世に浸透しはじめた昭和の時代では、ゲーム内に大きなデータで音楽を入れる余地はなく、シーンごとに旋律(メロディ)だけを短く入れることが限界でした。

 その最も有名なものとしては、ゲームのキャラクターが死んでしまってゲームオーバーになった際に印象的に使われたフレデリック・ショパン(1810または1809~49)作曲の「ピアノソナタ第2番変ロ短調作品35」でしょう。

 葬送行進曲と名付けられたこの楽曲の第3楽章冒頭は、ドラマなどでも死に直面するシーンで多く使われました。ダーンダーダダーンと印象的なリズムで進む冒頭は、ゲームオーバーの際に小学生の男の子たちがふざけあって口ずさんだものです。

 ピアノの詩人と呼ばれるショパンは、ポーランド出身のピアニストで作曲家です。美しい表現方法で数々のピアノ曲を残しました。

 かつてドラマ『101回目のプロポーズ』で使われた「別れの曲(練習曲作品10第3番)」や、アイススケートの羽生結弦さんのショートプログラムに採用された「バラード第1番ト短調作品23」などお馴染みの楽曲がたくさんあります。

 そのひとつ、この「ピアノソナタ第2番」は1839年フランスで作曲されました。第3楽章の葬送行進曲はそれ以前に作られていたことがショパンの友人に宛てた手紙に記されています。

 葬送行進曲とは、その名前のとおり葬儀の際に歩いていくための楽曲です。欧州では土葬が一般的で、棺を担いでゆっくり歩いて墓地へ行く際の楽曲として作られています。

 そのため、葬送行進曲はテンポのゆっくりした2拍子となっています。元気よく行進するマーチはテンポが速い2拍子です。

 モーツァルトやベートーヴェンもこの葬送行進曲のセオリーに則った楽曲を残しています。ショパンはこの曲を誰かの葬儀のために作ったとは明言を残しておらず、そのためショパン自身のためではないかとも考えられていましたが、はっきりしたことはわかっていません。

 ただ、とてつもなく悲壮感があり、重々しい名曲であることは間違いありません。死に直結したこの楽曲は今でもゲームだけでなくドラマなどの演出に欠かせない楽曲となっています。