親が持っている不動産をいずれ相続する見込みがある場合、まず準備しておくことは何だろうか。相続税額をどうカットするかは、相続人たちの最大の関心事だが、それを左右する決定的な書類について、実は多くの人は関心が低い。親が健在なうちにしっかり用意しておくべきその重要書類とは……!?※本稿は、内藤 克『残念な相続〈令和新版〉』(日経プレミアシリーズ)の一部を抜粋・編集したものです。
相続対策でもっとも重要なのは
「納税資金を準備」すること
私は「住宅ローンはなるべく繰り上げ返済しないほうがいい」と考えています。それが相続人自身が実行できる数少ない納税資金対策だからです。
一般的に相続対策というと、財産を残す親などが中心となって行うものです。財産を持っている本人が動き出さない限り、周りがいくら騒いでも始まらないからです。所得税の節税対策はご本人の手取りが増える効果があるためすぐに実行するのですが、相続対策のほうはご本人が相続税を納めるわけではないため、なかなか重い腰を上げようとしないのです。
そして相続対策というと、まず「節税」を思い浮かべるものですが、これは間違い。実は一番初めに行うべきなのは「納税資金の準備」なのです。相続税の納付は財産を取得した相続人が行わなければなりませんが、すぐに現金化しにくい不動産を相続した場合など、手元に納税資金がないと大変なことになります。
一方、納付は必ずしも相続した財産で行う必要はなく、もともと自分がためていた財産で納付してもかまわないのです。逆にいえば、自分で納税資金の準備ができているのであれば、不動産ばかりを相続しても納付で苦労することはないわけです。