「発達障害」と間違われやすい子どもの多くに見られる“生活習慣”とは脳が発達する順番は、どんな人でも変わらない。脳の成長バランスが崩れると「発達障害もどき」になるが、脳をつくり直せる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

集団行動ができない、友だちとのコミュニケーションがうまくいかない、集中力がない、ミスや忘れ物が多い、相手の話を聞いていない……近年、発達障害と呼ばれる子どもが劇的に増えているのをご存じでしょうか。しかし、小児科医の成田先生によると、本当に発達障害と診断されるお子さんはそこまで多いわけではないそうです。前回に引き続き、今回は35年にわたって子どもの脳・育ちに向き合ってきた成田奈緒子さんの新刊『「発達障害」と間違われる子どもたち』から睡眠がもたらす子どもへの影響について抜粋して紹介いたします。

脳が発達する順番は、どんな人でも変わらない

 子どもの発達を考えるうえで重要となるのが、脳が育つ仕組みです。

 人間の脳は生まれてから約18年をかけて、さまざまな機能を獲得しながら発達していくのですが、じつは脳の発達する順番はどんな人でも同じなのをご存じでしょうか。

 まず最初に発達するのが、脳の一番中心にある「からだの脳」、その次が大脳にある「おりこうさん脳」、最後に育つのが前頭葉にある「こころの脳」。それぞれの機能・場所について簡単に説明しましょう。

「からだの脳」は、脳幹や間脳、小脳、扁桃体などにあたる部分で、人が自然界で生きるのに欠かせない機能を担っています。生きるのに欠かせない機能とは、たとえば“呼吸・体温調整・体を動かすこと”、“起きることと寝ること”、“食べること”、“感情を生むこと”などです。

 次に成長する「おりこうさん脳」は大脳と小脳のことを指します。 “言葉を使う能力”、“計算・記憶に関する力”、“知識を蓄え、それを使って考える力”、“手指を動かす力”などが主な機能です。

 最後の「こころの脳」は、前頭葉(脳の前側の部分)にあたります。主な機能は、想像力を働かせること・判断すること・感情のコントロールをすること、人を思いやって行動することなど、まさに「人らしい能力」をつかさどる部位です。“感情や衝動を抑え、じっくり考える力”や“論理的思考力”、“コミュニケーションをスムーズにとる力”などのことですね。

脳の成長バランスが崩れると「発達障害もどき」に

 それぞれの脳には盛んに発達する時期があります。生きるのに一番大切な「からだの脳」は0~5歳の間に、「おりこうさん脳」は1~18歳くらいまでに、最後に発達していく「こころの脳」は10~15歳にかけてつくられ、18歳前後まで発達し続けます。

 よりイメージしやすくするため、脳の発達を「家づくり」にたとえるならば、家全体を支える1階が、「からだの脳」です。その上に乗る2階は「おりこうさん脳」。1階と2階をつなぐ階段の役割を果たすのが、「こころの脳」といった具合です。

 さて、ここで一つ気をつけてほしいのが発達する順番です。

 たとえば、「からだの脳」が盛んに育つ時期に早期教育などで、「おりこうさん脳」ばかり刺激すると、土台がうまく育たないことがあります。土台がしっかりしていないと、バランスが崩れやすく、将来何かあったときに家全体が倒れてしまうことも。つまり、「からだの脳」がしっかり育っていないと、脳全体のバランスが崩れることがあるのです。

 脳のバランスが崩れた結果、「落ち着きがない」「集団行動ができない」「ミスや忘れ物が多い」などの行動が出たり、学校生活などがうまくいかなくなることは多々あります。

 実は、これらの行動が発達障害で現れる症候によく似ているので、「からだの脳」が育っていない子は、「発達障害」と勘違いされてしまうことも往々にしてあるのです。これこそ、まさに発達障害もどきだといえるでしょう。

 だからこそ、「からだの脳→おりこうさん脳→こころの脳」の順番に、脳の部位を育てていくことが健全な脳の発達には欠かせないのです。

脳をつくり直すたった1つの方法

 ここまでお読みになって、うちは小さい頃からおけいこごとをやらせすぎていた、脳のバランスがすでに崩れているかもと思ったとしても、心配はいりません。脳は何歳からでもつくり直せるからです。特に発達が目まぐるしい子どもならすぐに変わります。

 では、何をすればいいのでしょうか。

 その方法として、行ってほしいのが「生活の改善」です。生活を改善すると、(1)からだの脳の育て直しができ、脳のバランスが整う、(2)セロトニン神経を育てられる、(3)睡眠が安定する、といった3つのよいことが起き、発達障害もどきの子でも言動がみるみる変わっていきます。

 ここでどうしても食事ができないという3歳の女の子・Oちゃんの事例を見てみましょう。

 お母さんが相談にいらした当初、Oちゃんは偏食がひどく、食卓に座らせてもほぼ何も食べません。お母さんにOちゃんの生活について聞いてみると、物心ついてから午前0時より前に寝たことがほぼないというではありませんか。

 毎晩21時から寝かしつけを始めるのですが、布団にいってもOちゃんが起き出し、遊んでしまって眠らない。22時頃になり少しうとうとし始めたかなと思ったところで、お父さんが帰ってきてしまうのだそうです。すると、喜んでお父さんのところに行き、お父さんと遊んでしまう……。結局、やっと午前0時を過ぎた頃に寝つくので、翌朝は当然起きられません。昼まで寝ていることもあるといいます。やっと昼頃に起きてきたOちゃんにご飯を食べさせようとしてもまったく食べず、しばらくしてから自分の食べたいものを少しだけ食べる生活が続いているとのことでした。