ただ欧米諸国は経済制裁を簡単には解除しないであろうし、エネルギー価格も急速に回復される見通しはない。この際、中国と連携を強化する以外に方法はあるまい。中国とは2004年に国境を画定し、長年懸案であったガス長期供給価格も合意した。従来からロシアの影響下にあった中央アジアについても既に中国の経済的影響力は拡大しているところ、思い切って連携を図ろう。

 とはいえ、やはり日本との関係は、中国への依存をある程度中和し、米国との関係でも牽制材料となりうるので、重要である。懸案の北方領土問題で日本がどの程度妥協の余地があるのか揺さぶり、日本の態度を見極めたうえで、関係改善に大きく踏み出そう」

IS・シリア問題で欧州と関係改善?
トルコによる撃墜事件の誤算

 確かにプーチン大統領の戦略的巻き返しは、パリでの同時テロがもたらした環境変化もあり、成功しているように見受けられる。現在の欧州の最大の課題は、ISテロの再発を防ぐ意味でもシリア難民問題を解決することにある。このためにはIS壊滅の軍事的キャンペーンを成功させるとともに、シリア問題の政治的解決が必須となる。

 ロシアはIS壊滅のため空爆に参加をしたが、同国の目的はIS排除と共にアサド政権を支援することにもある。ロシアにしてみればアサド政権との間の軍事的協力関係、とりわけ空軍基地や海軍基地をシリア内に確保し続けることが、NATOへの抑止力の観点から必要と考えているのだろう。ISへの空爆にしても、ロシアの場合はアサド政権の地上兵力と連携がとられているため、空爆だけのオペレーションに比べれば圧倒的に効果的である。

 ISを撃つという観点から仏などの諸国とは一定の協力関係が成立している一方で、米国はアサドの排除を前提にするだけにロシアとの協調は難しい。さらにオバマ大統領は地上軍の派遣は行わないことを明確にしており、対IS軍事キャンペーンにおいても存在感が薄れつつある。

 また、アサドを支持するという意味でロシアとイランの間には協力関係が強まってきている一方で、サウジやエジプトと米国の関係も従来のような堅固な関係ではなく、中東における政治地図も変わりつつある。

 ただ、ここにきてロシア軍機をトルコが領空違反として撃墜した事件は、プーチン大統領にしてみれば計算違いであったのだろう。欧州と関係改善の方向に向かっているロシアがトルコ問題で水を差されたという意識は強い。