そんな、かなわ水産の「安心安全で美味しいカキ」は評判をよび、名だたる料理人や、星付きレストランのオーナーたちが日本各地から、瀬戸内海の小島を訪れる。

「飲食店、百貨店、一般のギフト。どれも、安定してきっちりしたものを届けていたら評判を聞きつけてお客さんは、向こうからやってくる」と三保さん。

「どんな相手にも、うちと取引するんだったら、ここまで来てくださいと言い切ってます。なんでかといえば、長続きする相手としか取引したくないから。そのほうが長くきちんとした商売が続けられるんです。三ツ星のレストランでうちのカキが使われているのを見たら、それを知った人がどうやってカキを仕入れたらいいか聞くじゃない。そのときに『あの会社は厳しいですよ』とその人がうちの会社を紹介したら、またブランドとしては、ワンランク上がるわね(笑)」

 三保さんは、きっぱり言う。

「うちは営業いっさいやってない。したことないね」

「生食用専門」でブランドを築いてきた確固たる自信である。

オイスターバーで人気の生食用殻つきカキ
「先端<SENTAN>」とは?

 日本でのオイスターバーブームの到来は、2000年に入ったころからと言われている。とくに2003年、ニューヨークに本店を持つ「グランド・セントラル・オイスターバー東京」が品川に出店したことでオイスターバーの知名度が急速に高まり、日本各地のカキ生産者が「生食用殻つきカキ」を手掛けるようになった。

 むき身主体だったかなわ水産でも、本格的に殻つきカキの養殖に着手した。その際に重要だったのは、養殖方法だ。

 広島では、一般的に「筏式垂下法」での養殖が行われている。「カキ筏」とよばれる竹組みを作り、その下にホタテなどの稚貝のついたワイヤーをぶらさげて海中で育てる方法である。

 生食用カキは、むき身と違って、殻の形が重要になる。ディープカップとよばれる深みのある形状で、形がある程度そろっていることが条件だ。その場合、従来の筏式では複数のカキが密着してしまうため、殻の形状が平たく、形もいびつに育ち、さらにバラバラにする作業も必要になる。

先端は、シングルシード方式でかごを使って育てられる

 一方、欧米で主流とされるのは「シングルシード方式」。カキの稚貝をネットやかごに入れて育てるため、カキがひとつひとつ離れた状態で育てることができるため、殻がドーム状で厚みのある身が育ちバラす手間も不要だ。また、この方法の場合、従来筏式の問題だった外敵に食べられるといった被害や、落下の恐れもない。

 かなわ水産ではシングルシード方式を導入。そしてさらに世界を視野に入れた商品開発をスタートした。

「カキ専業で長くやってきて、やはり世界を制覇したいというのがありました」と三保さん。日本からのカキの輸出はまだまだ実績が少ない。

「世界各地を視察しましたけれど、広島ほど豊穣な海はない。広島だけで年間2万トンのカキが作れる。韓国全土で2万トン、アメリカなんて全土で2万トンですよ。生産性は広島が一番なんです」(三保さん)

 そして数々の工夫を重ね、2013年、ついに世界市場に先駆けた商品がデビューした。その名も「世界戦略的かき 先端(SENTAN)」である。