原油安が米国のインフレ率を押し下げれば、利上げペースが非常に緩慢になる可能性も高く、早々に利上げが打ち止めとなる可能性も排除できない。その場合に、ドルは主要通貨に対して売られ、原油価格には一定の上昇圧力がかかると予想される。

 14年の日銀の追加緩和により生じた円安と物価上昇が、家計の実質購買力低下を促したことなどもあり、15年の日本の為替政策は過度な円安の抑制を意識した。

 その結果、市場の円安期待も収縮し、米国の利上げにもかかわらずドル円の上値は重くなった。米国が利上げをストップさせるようであれば、一気に円高が進むことになるだろう。

 足元では「生鮮食品・エネルギーを除く」CPI(消費者物価指数)が上昇基調にあることから、日銀は追加緩和を見送っているが、かかる物価上昇のよりどころは円安だ。

 ドル安に伴う原油価格上昇の度合いにもよるが、円高がもたらす物価下落圧力が日銀の追加緩和のトリガーとなる可能性が高い。

 結局、日本の物価が円安に頼らない形では上昇しにくいのが問題なのだが、米国の利上げペースのいかんにかかわらず、日本の長期金利の低下局面は続きそうだ。

(SMBC日興証券シニア金利ストラテジスト 野地 慎)