このほど大和総研が出版した『この1冊でわかる世界経済入門』は、これからの世界経済を読み解く上で注目のポイントが網羅されており、とても便利だ。加えて「入門」と銘打っているものの分析も深い。同書の監修にあたった大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸(みつまる)氏に、同書の狙い、読み方を聞いた。
――この本は大和総研の多くのエコノミストが執筆に参加し、総力をあげたという印象を受けます。この本を貫いている問題意識は何ですか?
21世紀に入り、経済のグローバル化が一段と進行するようになりました。こうした世界経済の潮流のなか、私たちエコノミストが日本経済の動向を分析する際にも、国内経済のみならず、グローバル経済の動向についても同時に把握しておくことがますます重要になってきています。
GDPや為替、金利、失業率などの経済用語について、耳にしたことのない人はおそらくいないでしょう。円安になれば輸入食品の価格が上昇するため、多くの方たちは家計の心配をするものと思われます。また、金利が低下すればローンを組みやすくなるため、自動車やマイホームの購入を検討する家庭が増えるかもしれません。このように、経済はいうまでもなく私たちの日常生活に深く関わっています。
しかし、「日本経済のことでも難しいのに、世界経済ともなるとさっぱりわからない」という方も多いのではないでしょうか。本書は、こうした悩みにお応えする目的で執筆されました。私たちの生活と切っても切り離せない経済、本書は中でも日本経済に大きな影響を与える世界経済に焦点を当てています。ビジネスマンはもちろんのこと、ご家庭の主婦や就活生など、どんな方でも気軽に読める、わかりやすい書籍を目指しました。
――多くのエコノミストが執筆を分担されていますが、全体をまとめるに際して、意識されたこと、苦労されたことは何ですか。
今回の書籍は、計7人のエコノミストが執筆を担当しました。執筆者の中には、エコノミストとしての経験が長い者もいれば、そうでない者もいます。書籍の執筆にあたって、私が最も意識したのは、こうした経験も得意分野も異なるエコノミストを集めて、質の高い分析・豊富な情報・わかりやすい内容、といった要素を兼ね備えた1冊とするために、どのようにとりまとめていくかということでした。