萩原氏によれば、デジタル遺品のトラブルは、「ITの知識や当事者の属性と関係なく、デジタルデバイスを使っていれば誰にでも起きる」という。そしてそのトラブル内容は、「遺族に見られたくないものを見られる」パターンと、「遺族が見なければならないものを見られない」パターンに大別できるようだ。

 では、実際にどのようなトラブルが考えられるのか。高齢社会の進展で注目を集める遺品整理問題は、決して高齢者だけのものではなく、現役の中年世代も常日頃から考えておかなくてはいけないことだ。ここからは萩原氏の話をもとに、我々がどのようなデジタル遺品のトラブルに遭う可能性があるのか、そのパターンをシミュレーションしてみたい。

夫のパソコンから女性との動画が!
遺族が苦しむ「知らなくていい情報」

 まず大前提として、現在どれだけ健康的に暮らしている人でも、常に「突然亡くなる可能性」があることを心に留めておく必要がある。不慮の交通事故や突然死など、まったく予期しない形で“死”がやってきても不思議ではない。それは年齢や環境にかかわらず、誰にでもあり得る話だ。そうした突然の死は、特にデジタル遺品の問題が発生しやすいといえる。死への準備がまったく整っていない状態で亡くなるからだ。

 ということで、デジタル遺品トラブルのパターンをシミュレーションしてみよう。まずは「見られたくないものを見られる」パターンだ。

 40歳のAさん(男性)のケースを考えてみる。Aさんは、既婚者で2人の子どもがいるとする。そのAさんが、事故や突発的な病気で亡くなってしまった場合、どうなるか。

 最愛の夫が突然この世を去ってしまい、妻は悲嘆に暮れる。それからしばらくして、彼女は夫が使っていた家のパソコンに目が止まる。突然の別れで寂しいからこそ、彼が残した様々なファイルを見たいと思うだろう。2人の写真データや思い出が残っているかもしれない。

 しかし、多くの男性ならここで思い当たる不安があるのではないだろうか。そう、パソコンの中には往々にして「妻には見られたくない」データが保存されている可能性がある。それは妻ではなく、彼女でも両親でもいい。

 軽度なもので言えば、個人的な嗜好の詰まった卑猥な画像が考えられる。それだけならまだ許せるものの、たとえば過去に交際した異性との写真を残している人もいるだろう。筆者の知っているところでは、異性と性交渉をしている際の動画を保存している既婚男性もいる。