もしAさんが100万円をFXの元金とした場合、国内のレバレッジで1000万円単位、海外なら億レベルでの取引ができることになる。そうなれば当然、利益とともに損失の金額も大きくなる。

 Aさんが何かの通貨や株にお金を投資していた状態で亡くなった場合、当然その投資は放置される。もしこのタイミングで運悪く相場に大きな変動があったらどうだろう。Aさんの運用はどんどん損が膨らんでいるにもかかわらず、妻がそれを知らないまま、取引が継続されているのだ。レバレッジ次第では、突然死により損失が1000万円以上になって妻に降りかかるかもしれない。

 萩原氏の著書では、実際に夫を亡くした妻が、突然FX会社から「1500万円の損失を通知された」というエピソードが載っている。投資運用のサイトは、他人に操作されないよう、普段からパスワードを厳重に管理して、本人しかログインできないようにするのが基本だ。しかし、死後となると話は正反対。すぐに遺族が取引を止められないと、大変な損失を背負わせてしまうかもしれないのだ。

スマホやデジカメもトラブルの巣窟
「本人の自業自得」では済まない

 ここまでのシミュレーションはパソコンのケースに限ったものだが、同じようなことは他のデジタルデバイスでも当然起きる。たとえばスマホ。所有者が亡くなったとき、そのスマホを家族や恋人が見てしまう可能性はないだろうか。もし見られたとき、その端末には過去の恋人との思い出が残っているかもしれない。誰にも見られないつもりで、友人にパートナーへのグチも吐いているだろう。それだけでもパートナーの気持ちは複雑だが、場合によっては、浮気相手・不倫相手との赤裸々なやり取りが残っていることもある。

 筆者の知人には、「恋人や妻・夫のスマホのパスワードを密かに知っている」という人は少なくない。一緒に生活している時、スマホのパスワードを入力する際の手の動きなどを見ていればわかるという。

 相手が生きている間は、多くの人が盗み見をためらうものだが、死後はそのパスワードを入れて、パートナーのスマホを見てしまう可能性も考えられる。“秘め事”のようなメッセージのやり取りを見られるケースは、LINEメッセージが流出して騒動の渦中にいる人気タレントだけに起こり得るトラブルではないのだ。

 デジカメもリスクは高い。デジカメのメモリに保存しておいた写真が、本当に誰が見ても問題ないものなのか、よく考えてほしい。それこそ、内密な関係にある相手と旅行に行った直後に亡くなってしまえば、デジカメにその写真が保存されているかもしれない。亡くなった本人は自業自得でかばう必要もないが、可愛そうなのは、それを見て悲しむ遺族である。

>>後編『現役世代も考えたい 「やばいデジタル遺品」生前整理術(下)』に続きます。

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