もしもパスワードの手がかりがつかめない場合、パソコンデータの復旧会社に依頼するという手段も考えられる。ただし、「遺族のパソコンだ」と言って持ち込みながら、実は「ストーカーが女性からパソコンを盗んで、それを持ち込んだ」などという犯罪の可能性も考えられるため、業者は「簡単には応じない」と萩原氏は言う。それでも、あまりにこうしたトラブルが多いためか、「相続人全員の合意を書面で取っている場合のみ」という条件で対応する業者もいるようだ。

 なお、故人のデジタル遺品は、廃棄処理する上でも注意が必要だ。故人のパソコンやスマホを廃棄する際は、「目の前でハードディスクを粉砕してくれるような業者に依頼するのがベスト」と萩原氏。そうしないと、厳密にはデジタルデバイス内の記録が消えないため、自分では廃棄したつもりが、その後デバイス内に残ったデータを復元されて、故人の情報などが悪用される可能性があるという。

死んでから家族に嫌われないために
現役世代も肝に銘じておくべきこと

 重ね重ねの話ではあるが、私たちは誰もが突然亡くなってしまう可能性を背負っている。もし自分がその悲劇に見舞われたとき、身の回りのデジタルデバイスがどうなるかをイメージしてみると良いだろう。家族に伝えなければならない情報、そして家族に見てもらいたくはない情報。いずれも思い当たる人はきっと多いはずだ。

 個人的な話で恐縮だが、筆者は30歳を超えて、東京でフリーランスのライター生活を送っている。両親は田舎暮らしだ。結婚はしておらず、子どももいない。親が「孫の顔を見る」なんて話は自分とは関係ないことのように感じる。親孝行と呼べるようなことは何もできていない。

 そんな自分がもし突然死んでしまったら、親は深く悲しむだろう。そして、突然の死だからこそ、やはり遺されたパソコンやスマホを開ける気もする。自営業となれば、生前の仕事関係者には両親から息子の死を連絡するくらいしか手段がない。その作業のために、親は子のパソコンを見るかもしれない。望むと望まないとにかかわらず、だ。

 だがもしそのとき、“見るべきではないファイル”が親の目に入ってしまったら――。これほどの親不孝があるだろうか。冗談ではなく、死んでもなお親を悲しませるのは、さすがに胸が痛む。だからこそ、今からデジタル遺品整理の準備と対策をしておくべきではないか。そんなことを痛感した次第である。高齢者ばかりでなく、現役世代にとっても他人事ではないのだ。