生活のデジタル化が進むなか、“遺品”もデジタル化している。それが自分の死後に思わぬトラブルを生む可能性もある。あなたのパソコン、スマホ、デジカメには、死後に家族が見つけると悲しむであろう「やばい情報」がたくさん詰まっているからだ。一方で、残された家族が知らないと困る「大切な情報」もあるだろう。常日頃から、私たちはデジタル情報をどのように管理・整理しておけばいいのか。(取材・文/有井太郎、編集協力/プレスラボ)
家族に知らせたい? 知られたくない?
情報の混在が生む「デジタル遺品」トラブル
「亡くなった夫のパソコンから、知らない女性と撮った生々しい動画が出てくるなんて……」
この20年近くで、私たちの生活は大きく変わった。連絡手段は、電話よりもメールやLINEといったコミュニケーションツールが主流になり、デスクワークもほとんどがPCで行われるようになった。写真は現像するよりもデジタルデータで保存するのが一般的となり、買い物においてもインターネット上で済ますことが容易になった。人々の行動は、紛れもなく「デジタル化」を遂げたと言えよう。
総務省の平成26年通信利用動向調査を見ると、その変化がよくわかる。たとえば、1999年におけるパソコン保有世帯の割合は37.7%だったが、2014年には78.0%まで上昇している。携帯電話・PHSは2014年で94.6%の保有世帯があるが、そのうちより多くのデータを保存・通信できるスマートフォンは、64.2%にも上る。
こうしたデジタル化は我々の生活を便利にしたが、一方でそれによるトラブルも急増している。その代表が「デジタル遺品」の問題だ。つまり、誰かが亡くなった際、これまでの遺品とは違う「デジタル化された遺品」が残るため、その処理において遺族がトラブルに遭ってしまうのである。
日本セキュリティ・マネジメント学会の常任理事であり、著書『「デジタル遺品」が危ない そのパソコン遺して逝けますか』(ポプラ社)を上梓した萩原栄幸氏は、デジタル遺品のトラブルが起きる原因をこう語る。
「パソコンやスマホといったデジタルデバイスには、人に知られたくない“自分だけの情報”と、自分が死んだ際に“遺族が知るべき情報”が、混在して保存されています。そしてそれらの情報は、死後の対処に向けた策を講じていないケースがほとんど。そのため、人に見られたくないものを見られてしまうトラブルと、人が見なければならないものを見られないトラブルに陥ってしまうのです」