ITバブルとその崩壊を言い当てたロバート・シラー イェール大学教授は、4年前のインタビューで住宅バブル崩壊と不況到来のシナリオも的確に予測していた。その貴重なインタビューを再掲載する。
ITバブル崩壊を予言した、あのシラー教授が今度は住宅市場と米国経済の行方について警鐘を鳴らしている。住宅指数先物相場の生みの親でもある同氏に、リスクの正体を聞いた。(*「週刊ダイヤモンド」2006年10月14日号特集「総点検・住宅バブル崩壊でどうなる米国景気」より再掲載。文中の登場人物の肩書きなどは掲載当時のままです)
―米国の住宅価格はどこまで下がると見ているか。
1990~97年のあいだに、ロサンゼルスの住宅価格は、インフレ調整後の実質ベースで、40%ほど下落した。今回も米国の複数の地点で同レベルの調整が起きたとしても不思議ではない。それだけここ数年の住宅ブームは、過去に例を見ないほど大きなものだった。下方向にぶれたときの反動は当然大きくなる確率が高い。
私の研究チームでは、住宅購入者の意識調査を88年以来実施しているが、2005~06年に、将来期待値は大幅な下落傾向を示している。たとえば、ロサンゼルスの住宅購入者が予測する06年の住宅価格(中間価格)の伸び率は昨年調査時点の10%から今年4月には5%に急落した。ボストンも同期待値は5%から2%に下落している。
今後、金利動向などによっては、上ぶれする局面もあるだろうが、相場の地合いは弱い。なにより重要なことは、これまで暗黙のうちに形成されていた「住宅の右肩上がり神話」を人びとが信じられなくなっていることだろう。この大衆心理の変化は、じわじわと住宅市場を圧迫していくはずだ。
―住宅神話の終焉が米国経済全体に与える影響をどう見るか。
正直なところ、非常に心配している。住宅市場の動向は、景気サイクルと非常に密接な連動性を示す。過去の例を見ると、中古住宅の改装投資を含む住宅投資額は必ずといっていいほど不況の前にピークを迎えていた。ちなみに、05年の民間住宅投資の水準(対GDP比)を凌ぐのは1950年だけだ。したがって、すでにピークアウトしたと見るのが妥当だろう。だとすれば、2年以内に、米国経済はリセッションに突入する可能性が高い。