スタッフの女性が、部屋を出て行った直後に音がしはじめた。しかし痛くも痒くないからつい眠ってしまった。「終わりました」の声であわてて目覚めた。何分位寝ていたのか、わからない。終わって時計を見たら20分位時間が経過していたようだ。

「医師から後ほど説明がありますから着替えてお待ちください」と言われた。とても感じのいい放射線技師の女性に見送られて部屋を出た。人生初めての脳ドックは予想以上に簡単だった。

医師からの意外な一言
「これを持っていてください」

 朝から何も食べていないので、検査結果を聞く頃にはいつも空腹を覚える。その日も「今日のランチは何を食べようか」と考えながら待合室で待っていた。

 名前を呼ばれて部屋に入った。脳外科専門医が、UさんのMRIの画像を指差しながら言った。

「3つ脳動脈瘤がみつかりましたが2つは全く問題ありません。年齢的にはあってもおかしくないものです。しかし1つだけ、脳血管に気になる動脈のこぶがみつかりました」

 医師はUさんを不安がらせないように細心の注意を払いにこやかにこう続けた。

「今日明日、どうこうというレベルではないですが、お父さんがくも膜下で亡くなったことを考えると、半年に1回経過観察をしましょう。写真のコピーをお渡ししますから、お守り替わりに持っていてください。そして何かあったら必ず医師に渡してください」

 Uさんは内心ショックだった。しかし、帰ってから妻にだけはこの脳の写真を渡しておこうと思った。

 脳ドックを受けて数ヵ月後のある明け方、頭痛で目がさめた。「もしや脳動脈瘤が破れたか…」と急に不安になった。その日は会社を休んで健康診断を受けた医師に相談に行き、MRIを手配してもらった。

 診断後、医師が静かに告げた。