「Uさん、数ヵ月前より少しだけ脳動脈瘤が大きくなっています。破れる前に手術をすれば、大事に至る可能性がとても低くなります。クリップと言われるコブの根元を止める手術をすれば、心配は減るでしょう。2時間程度の手術になります。ただ、今破れているわけではないですから、手術に抵抗があるようであれば、この写真をお渡ししますから、セカンドオピニオン外来がある専門医に診てもらってください」

後遺症無しの完治が難しい「くも膜下出血」
血管が破裂する前のケアが重要

 Uさんは、インターネットでセカンドオピニオン外来がある大学病院をみつけて訪ねた。写真を渡し、脳ドックの医師から言われたことを丁寧に伝えて、ドキドキする気持ちで反応を待った。

 結果は同じだった。そしてUさんは心に決めた。最初に健康診断の脳ドックで脳動脈瘤をみつけてくれた医師に手術をしてもらおうと。幸い、クリニックの系列病院には手術設備もあり、医師自身が執刀をしてくれるらしい。お守り替わりに毎日、MRIの写真を持って不安を抱えながら、この先の人生を送るよりも、今から打てる手は打っておこうと決めた。

 その後、Uさんの手術は見事成功した。父親より長生きできている喜びを毎日かみしめている。脳ドックを受けたことで、それ以後の人生が変わった。息子には、自分のように寂しい思いをさせたくないと心から思った。

 脳血管手術で実績のある財団法人脳神経疾患研究所の系列の大手町東京クリニックで、脳ドックを担当する医学博士の小島正徳氏は、脳動脈瘤の手術について語る。

「Uさんの場合は、画像診断で脳動脈瘤がみつかり、経過観察でそれが大きくなっていると判断されたこと、それに合わせて年齢的に若く体力があると判断されたことから、医師に手術を勧められたのだと思います。

 脳動脈瘤は場所によっては、破裂してしまうと後遺症無しに完治するのが非常に難しい病気でもあります。しかし、このように破裂前にケアすれば、かなりの確率でよくなります。

 通常5ミリ以下の脳動脈瘤は経過観察と言われていますが、3ミリ以下でも手術を勧められることがあります。しかし簡単な手術ではないので、信頼できる医師に執刀してもらうのがよいでしょう」

≪取材を終えて≫
最近、プロ野球球団のコーチがくも膜下出血で亡くなったことがきっかけになり、若い方の脳ドックの問い合わせが増えているそうです。ピークは50歳とも言われています。家族に脳血管系の疾患で亡くなった方がいる方や高血圧の持病のある方は、1年に1回MRIを受けてほしいと思います。また気になる頭痛や、めまいやしびれは体質や疲労、ストレスと放置せずに専門医に相談することをおすすめします。(医学ジャーナリスト・財団法人日本ヘルスケアニュートリケア研究所代表 市川純子)

【お詫びと訂正】
当記事のタイトル、中見出し、本文中に誤りがございました。以下のように訂正いたします。
タイトル「脳梗塞」→「くも膜下出血」に訂正。
1ページ目冒頭「脳梗塞」→「脳動脈瘤」、5行目「脳出血」→「くも膜下出血」、同中見出し「若くして脳出血で亡くなった父」の「脳出血」→「くも膜下出血」に訂正。
2ページ目11行目「梗塞」→「脳動脈瘤」、同12行目「梗塞」→「動脈」、同19行目「脳梗塞」→「脳動脈瘤」に訂正。
3ページ目1行目、9行目、18行目、20行目、23行目、26行目「脳梗塞」→脳動脈瘤」に訂正。3ページ目中見出し「後遺症無しの完治が難しい『脳出血』 」についても「脳出血」→「くも膜下出血」に訂正いたします。
関係者、読者の皆様にご迷惑をおかけいたしました。深くお詫び申し上げます。