会社を出るときには、私は同僚に「行ってくるね」と声をかけながら、上司と歩調を合わせゆっくりと歩いていました。ところが、会社を出たらすぐに上司から「走るよ!」と言われ、途中チケットを購入し、新幹線のホームまで走り、ギリギリ新幹線に乗ることができました。

 ホッと安堵し時計を見てみると、会社を出てから15分が経過していました。そして、なぜオフィスの中ではゆっくりと歩き、外に出るや否や急に走り始めたのか、その理由を聞いてみようと思った矢先、こんなふうに言われました。

上司:「急に走らせてしまって、申し訳ない」

 私:「いいえ、お急ぎでしたから」

上司:「ビジネスの世界では、どんな時でもオフィスでは走ってはいけないんだ」

 私:「なぜでしょうか?」

上司:「ネガティブな印象を周囲にあたえてしまうからね」

 私:「ネガティブな印象?」

上司:「そうだ。たとえば、リーダーがいつもオフィスを走っていたらどう思う? 落ち着きのないリーダーだと思われるし、そんな人にマネジメントを任せられると思うか?」

 私:「いつもオフィスの中を小走りで歩いているリーダーを見ていたら、大丈夫かしらって心配してしまうかもしれませんね」

上司:「そうだろう? 人の上に立つ者は、どんな時でも堂々としていなければならない。歩く時もそうだ。たとえどんなに急いでいてもね」

 私:「だから先程、オフィスを出てから急に走られたのですね」

上司:「そうだ」

 私:「なるほど、よくわかりました。それから、ふと思ったのですが、秘書の私もつねに堂々と歩くようにしないといけませんね」

上司:「周囲の目がある時は特にそうだ」

 私:「はい、わかりました」

上司:「それから、たまにスタートダッシュの練習をしておいたほうがいいかもしれないな」

 私:「スタートダッシュ?」

上司:「あぁ、これは冗談だよ。これからも突然走ることになるかもしれないからと思って(笑)」

 私:「はい。Aさん(上司)は、毎朝ジョギングをしてから会社に来られていますから、スタートダッシュの練習は十分ですものね(笑)」