口内町としての最初の一歩は、平成20年。林野庁の「山村再生プラン助成金」を活用して、過疎地に対応した「自家用有償旅客運送」の社会実証試験を行った。その成果を基に、「自家用有償旅客運送」を本格導入するためには、特定非営利活動(NPO)法人の設立が必要だった。

高齢化する地域の「足」に自家用車を使う試みの難しさ旧農協の建物に隣接する「店っこくちない」。ここに、旧JAスーパーがあった Photo by Kenji Momota

 平成21年6月に登記した「NPO法人くちない」では、定款に「高齢者の福祉向上を図る事業」を記載。自家用有償旅客運送による地域交通の提供、草刈・除雪などの生活支援活動、食料品などの販売を行なう「店っこくちない」などによる街の活性化事業、東陵中学校と口内小学校へのスクールバス運行の委託事業、そして地元で採れる「ごしょ芋」を使ったコロッケや餃子などの特産品の販売などを行なっている。

高齢化する地域の「足」に自家用車を使う試みの難しさ「NPO法人くちない」の事務局長、今野信男さん(写真左)と、「ごしょ芋コロッケ」を手に持つ事務局担当の高橋晴恵さん Photo by Kenji Momota

「NPO法人くちない」の事務局長を務める今野信男氏は、「自家用有償旅客運送については、全国各地の事例は社会福祉協議会による申請が多く、我々のように自治協議会が主体となるケースは珍しい」と指摘する。さらに「我々の申請が認可されるまでの平成21~22年、市の協議会の場ではタクシー事業者から猛反対されるなど、各方面との調整がとても大変だった」と当時の厳しい状況を振り返った。

 自家用有償旅客運送の申請を出すためには、地元の住民、公共交通機関、タクシー会社、労働組合が参加する協議会を設けて、そこでの同意書を申請書に添付する必要がある。

自家用有償旅客運送に2つの種類
「福祉有償運送」と「公共交通空白地・有償運送」

「NPO法人くちない」が現在許可を得ている、自家用有償旅客運送には2つの種類があり、それぞれ違う許可書を所持している。

 同書の申請者は、北上市自家用自動車有償運送運営協議会。宛先は、国土交通省・東北運輸局岩手運輸支局長だ。

 まず、「福祉有償運送」では、利用者は『要支援、要介護、市が同等に認める人』であり、健常者は利用できない。運用する区域は『口内町発着かつ他方が官公庁、医療機関等生活に必要な施設であること』としている。

 さらに、「登録の付する条件」があり、『複数乗合(2名)は同一世帯の場合のみ認めるものとする。3名以上乗合の場合はタクシー事業者とハイヤー契約を行い対応する』とある。

 ここでいう、同一世帯での2名とは、要支援などの対象者と付き添いの人を指す。こうした「登録に付する条件」は、各地の社会実情を加味するため、申請する地域によって条件に違いがある。