いったいなぜ、女性はせっかくの資格を返上しなければならなかったのか ※写真はイメージです

 せっかく資格を取っても、仕事がないために自立できない人たちの話をよく聞く。

 昨年5月、当連載で紹介したワーキングプア女性弁護士も、その1人。記事を掲載後、問い合わせが相次ぐなどの大きな反響が寄せられた。

 しかし、結局、女性は資格の登録を抹消し、弁護士を廃業した。

 いったいなぜ、せっかく持った資格を返上しなければならなかったのか。そこには、維持するための会費などの問題があった。

月額5万円弱、滞納は約1年に
重くのしかかった弁護士会の会費

 弁護士資格がありながら、会費の問題などから廃業に追い込まれたのは、50代前半のA子さん。昨春、インタビューさせていただいたときも、5年ほど弁護士としての仕事がまともにないために、資格を隠して、細々と週に1回、本業と関係のないアルバイトをしているようなワーキングプアの状態だった。

 アルバイト以外の収入がなく、社会保険料も弁護士としての年会費も支払えずにいる。そんな仕事のない状況が何年も続いてきたが、会費の滞納がかさみ、弁護士と税理士の2つの資格を返上した。

 A子さんは、「引きこもり」というカテゴリーには当てはまらないかもしれないが、抱える課題は女性当事者のメカニズムと本質的に共通しているように思う。

 子どもの頃は母親から虐待を受けてきて、会社ではセクハラやパワハラの被害に遭った。

 司法試験に合格し、大手系列企業の「社内弁護士」として契約社員になったものの、親会社からの出向者による誹謗中傷などから、A子さんの仕事は極端に減少。毎日、職場に行っても、ほとんどすることがなくなり、A子さんも雇い止めとなった。

 以来、資格による性差別を感じている。

 これから先、「協調できる人と連携して、打開策を探りたい」と頑張ってきた。

 以前の記事を掲載した後、たくさんの読者から問い合わせやオファーなどをいただいたため、筆者がA子さんの意向を聞いたうえで、仲介する作業もしてきた。

 しかし、A子さんによると、弁護士会の会費は月5万円弱。滞納は1年近くに及んだ。会費が高いうえに、仕事がない場合の相談や会費減免などの措置がなかったことも、廃業を決断せざるを得なかった背景にあったという。