入金優先の技巧スキーム

 ここにきて、勝ったキヤノンのスキームが問題視されている。

 主要国の競争法ルールでは、当局に株式取得を届け出てから一定期間(日本の場合は30日)を経過するまでは株式を取得してはならない、という規定がある。キヤノンが独占交渉権を得たのが3月9日。このタイミングで、キヤノンが買収手続きを始めたとしても、到底3月末に間に合うように株式は取得できず、東芝への入金もできない。

 そのため、キヤノン陣営は極めてテクニカルなスキームを編み出した。競争法手続きの要らない特定目的会社MSホールディングス(MSH。資本金3万円)を設立し、一時的にこの会社が東芝メディカルを買収したことにして、MSHから東芝へ入金を済ませたのだ。リリースでは、「MSHは独立した第三者」となっているが、その代表者として、御手洗冨士夫・キヤノン会長と近い宮原賢次・住友商事名誉顧問が名前を連ねている。

 果たして、第三者的存在と言い切れるのか。法の網をくぐり抜けるようなディールに、「脱法行為との議論が巻き起こるリスクがある」(競争法に詳しい弁護士)。波乱含みのディールになった。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)