「誰が、あんなにつり上げているのか」とある外資系メーカー関係者が不思議がっているのが、東芝の医療機器子会社、東芝メディカルシステムズの売却価格だ。
3月中旬にも売却先が決まる同社の売却価格は、当初4000億~5000億円とみられていたが、ここにきて「6000億円は超えるようだ」(メーカー関係者)。間もなく実施される2次入札を前に、価格が高騰しているようだ。
東芝メディカルは、CT(コンピューター断層撮影)で世界有数のシェアを持ち、技術力も高いことから資産価値が高いのは紛れもない事実だ。だが、同時につり上がる価格には、綱渡りの経営が続く東芝と、その周囲を取り巻く人々のギリギリの思惑もちらつく。
「東芝の医療機器は、外為法案件だよ」と、経済産業省のある関係者は打ち明ける。
外為法とは「外国為替及び外国貿易法」のことで、安全保障など国の根幹に関わる貨物や技術の輸出を規制する法律だ。つまり、東芝メディカルは外為法に該当する技術を持つ会社であり、基本的に外資系傘下には入ることはないと示唆しているのだ。
2次入札には、有力候補の富士フイルム、キヤノンのほか、コニカミノルタ、三井物産がそれぞれ外資系ファンドと組んで参加する見通しだが、「買収価格の高騰は、(交渉が厳しいと知った)ファンドが仕掛けているのでは」(別のメーカー関係者)との指摘もある。