コスト回収の見込みゼロなら、
「よいこと」には手を出すな

 プリマベーラの吉川社長は、「よいこと」に手を出して痛い目に遭ったことがあります。
 プリマベーラの業務は、「リサイクル」です。
 そこに目を向けたあるコンサルティング会社から「事業の幅を広げ、タマネギの栽培(農業)をやってみないか」と声をかけられたのです。

 タマネギの栽培に必要な液体肥料は、食品の残渣物(カス)などが使われています。つまり、「液体肥料を使って農業をやることはリサイクルになる」というわけです。

「生ゴミを肥料にして農業をやれば、社会貢献にもなるし、企業イメージもよくなる」と考えた吉川社長は、門外漢にもかかわらず、農業を始めました。

「メディアにも取り上げられたりして、すごく気分がよかったですね(笑)。ところが、1000万円くらい投じているのに利益はさっぱり……。親戚にタマネギを売りつけて、嫌な顔をされたこともあります(笑)」(吉川社長)

 液体肥料を使った農業は、リサイクルの観点からも、エコロジーの観点からも、「よいこと」だと私も思う。
 吉川さんが間違っていたのは、「古着部門(本業)が赤字だったにもかかわらず、農業を始めた」ことです。

 吉川社長のやることは、古着部門の立て直しに全力を尽くすことであって、土日にタマネギの苗を植えることではない。だから私は「バカ!アホ!タコ!」と叱りつけたわけです。

「小山さんに怒られて、目が覚めました。農業をやめて古着に力を入れたとたん、V字回復。その後は6期連続で増収増益を続けています」(吉川社長)

 どれほど「よいこと」であっても、コスト回収の見込みのない計画は、やってはいけません。
 中小企業の社長は、「よい計画」ではなく「成果が出る計画」を立てるべきです。

<著者プロフィール>
小山昇
(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して株式会社ベリーを経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任して現在に至る。「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、600社以上の会員企業を指導しているほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回以上の講演・セミナーを開催。1999年「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。
2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。
『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』『強い会社の教科書』(以上、ダイヤモンド社)、『99%の社長が知らない銀行とお金の話』『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(以上、あさ出版)、『【増補改訂版】仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】
http://www.m-keiei.jp/