タックスヘイブンに隠匿された資産の一端を暴いた「パナマ文書」が世界を震撼させている。アイスランドで首相が辞任、英国ではキャメロン首相が窮地に立たされている。ロシアのプーチンも中国の習近平も強烈なボディーブローを食った。
隠匿資産にはいろいろある。権力者が私腹を肥やした財産を隠すのは途上国に多く、先進国では金持ちが税金逃れの財産を隠す。
どちらも国家・国民に対する重大な背信行為だが、利用者たちは「法に触れることはなにもしてない」と言いつのる。
先進国はどこも財政難で、増税や歳出削減が叫ばれている。だったら真っ先にすべきは、税金を払うべき企業や個人が、合法的に逃げる「租税回避」の解消ではないか。ところが対策は遅々として進まない。なぜか。
タックスヘイブンを必要とする勢力が強いからだろう。多くの国で、指導者が関与していたことをパナマ文書は明らかにした。
「警察署長が事件の黒幕」みたいな話である。背後には、もっと深い闇がある。金融ビジネスの闇である。
「伊勢志摩でタックスヘイブン対策」も
茶番に終わる公算が大
安倍首相が議長を務める伊勢志摩サミットで「タックスヘイブン対策」が話題となる、という。各国では手が及ばない難題こそサミットにふさわしい。首脳が集まりながら「パナマ文書」を無視することはできまい。
14日のG7財務省・中央銀行総裁会合の議題に上がるという。納税は国家の土台だ。財政・金融の責任者が真剣に向き合う課題だろう。だが、結論は見えている。「経済開発協力機構(OECD)の作業部会で進められている対策の進展に一層の力を入れる」というような文言が声明に盛られ、お茶を濁すことになるだろう。
タックスヘイブンは2013年、北アイルランドのロックアーンで開かれたG8サミットで主要議題として取り上げられた。議長は英国のキャメロン首相。この年は多国籍企業の脱法的節税が問題になっていた。
グーグル、アマゾン、マイクロソフトなどの多国籍企業がタックスヘイブンにペーパーカンパニーを作り、帳簿上の資金を経由させることで税金を逃れていた。英国では、スターバックスが積極的な事業展開をしながら税金はほんのわずかしか払っていないことが議会で問題になった。
「徴税の公平を歪めるタックスヘイブンの利用」を声高に批判していたキャメロンはサミットの議題に取り上げたのである。