木目が温かな棚に大理石調のテーブル。高級マンションのシステムキッチンかと見まがうほどだが、研究施設用の「実験台」である。従来の機能一辺倒で無機質な製品に対し、“快適性”を重視したデザインが研究者たちに好評だ。
有害な化学物質などを取り扱うための「ヒュームフード」(下の写真)では、環境対策を徹底している。排気風量を作業状況に合わせて自動調節し、非使用時には扉が閉じて使用エネルギーを大幅に節約。各設備はLANで結ばれ、CO2削減量を表示、研究者に省エネを促す。
地球環境と研究環境の双方に配慮した「グリーンラボラトリー」を推進。省エネ型のヒュームフード(写真)、洗浄・滅菌不要でリサイクル可能なPET樹脂製実験動物飼育ケージなどの機器に加え、施設全体の設計でも高効率化を実現
安全で、作業効率のいい研究所をつくりたい──。林進が、研究実験用設備機器メーカー、オリエンタル技研工業を設立したのは1978年。当時、メーカーでも大学でも、研究所は薄暗く、化学薬品のにおいが立ち込めているのが当たり前だった。「高度成長期で、大手メーカーでも生産施設には力を入れていたが、研究施設は古いままだった。事故も多発し、これでいいのかという思いがあった」。
林は理化学機器メーカーに13年勤め、開発や営業に従事した。機器の立ち上げで長期間研究現場に立ち会うこともあり、旧態依然とした設備環境に対する疑問を強めていた。
「どこでも作っているようなモノではダメだ」と、37歳で会社を立ち上げた。資本金の1000万円は、兄弟で住宅資金を出し合って捻出した。
スタート時の社員は、自身も含めて3人。「昼は営業、夜は設計」という毎日が続いた。当初は資金繰りにも苦労した。妻の実家に頼み込んで資金を借り、窮地を脱したこともある。
最も苦しかったのは「人が採れなかったこと」だ。斬新で使い勝手のよい製品が好評を得て、初年度から黒字達成。以後一度も赤字を出したことはなく、堅実に成長を遂げてきた。ところが時代はバブル期、大手志向の学生には見向きもされなかった。
状況が変わったのは設立10年目、茨城県つくば市に工場兼ショールームを建設してからだ。「これを見て、徐々に学生が入ってくれるようになった」。今では社員100人、博士課程修了者や海外で研究経験を持つ一流の人材が望んで入社してくる。
ライバルと一線を画す提案力と開発力で
大手から引き合い殺到
設備機器の分野では、競合メーカーは多数ある。しかし林は「われわれのようなビジネスモデルはほかにない」と胸を張る。