金融、特に鉄火場ともいえる金融市場に関しては、経済理論よりも、現場で実際にやってみなければわからないことがたくさんある。実務経験が重要で、それがないと実際の金融市場の理解はおぼつかない。

 中国当局は現在、人民元を、後述する「通貨バスケット」を参考に運営している。しかし、筆者のディーラー経験から見ても、現場では通貨バスケットを念頭としたディーリングは非常に面倒くさく、結局は対ドルの取引にシフトしていくものである。中国の通貨当局も市場をにらみ、ドルに連動させた人民元高政策を進めるものと考えられる。

そもそも通貨バスケットとは何か?

 通貨バスケットとは、様々な通貨をバスケット(かご)にまとめるかのように、加重平均した人工的な為替レートのこと。自国通貨を通貨バスケットに固定(連動)させる、あるいは参考にする通貨制度を、通貨バスケット制という。加重平均の比率は、一般的には貿易量等に応じて設定することが多い。また、この算出された加重平均のレートと一定の変動幅(ターゲットゾーン)を設けることもある。

 為替政策で通貨バスケットを使う理由は、米ドルなど一つの通貨に連動させるよりも変動が穏やかになることに加え、その国の経済の対外関係がより正確に反映されるメリットがあるからだ。逆にいうと、為替レートに対するその国の通貨(金融)政策の影響は少なくなるという特徴がある。

中国当局は通貨バスケットがお好き

 先日、筆者は上海郊外の住宅街にある中国外貨取引センター(CEFTS: China Foreign Exchange Trade System )を訪問した。一般的にインターバンク(金融機関間)の為替取引(ディーリング)は、以前はボイスブローカー(人)経由や直接電話取引が行われていたが、最近では電子ブローキングシステム(Electronic Broking System:EBS)経由で取引されるようになっている。しかし、中国では電話などのネットワークで自由に取引ができるわけではなく、インターバンク為替取引も、先物取引のように“取引所内”で取引・管理されている。その取引所に当たるのが、中国人民銀行傘下の組織CEFTSである。

 現在、取引されている通貨は14通貨(表参照)で、ここで成立した取引は上海清算所(SHCH:Shanghai Clearing House)に送られる。このような仕組みで、中国ではインターバンク取引のリスクの管理・低減を可能にしているわけだ。