北朝鮮は5月6日から平壌市の4.25文化会館において第7回朝鮮労働党大会を開催し、4日間の討議を経て、金正恩(キム・ジョンウン)第一書記(以下敬称略)を党委員長に推戴し、新たな党人事を採択して終了した。

36年ぶりに開催された北朝鮮労働党大会は、金正恩第一書記を党委員長に推戴し、新たな党人事を採択して終了した Photo:REUTERS/AFLO

 今回の党大会は1980年以来、36年ぶりの開催である。前回の党大会では、その後の北朝鮮の基本路線となる「全社会の主体(チュチェ)思想化」が採択され、故金正日(キム・ジョンイル)が実質的なナンバー2の地位に就いたことが内外に示された。

 開会の辞において、金正恩第一書記は「歴史的な時期に招集した」と述べた。前回の党大会以降、90年前後の東欧の社会主義国の崩壊、94年の金日成(キム・イルソン)死去、90年代後半の「苦難の行軍」という厳しい内外の情勢の中で体制を守ってきたことに対する回想を通して、今回の大会が名実ともに金正恩体制を宣言する行事となった。

 北朝鮮は謎の多い国である。私も北朝鮮の核実験に関する寄稿(「すべてを敵に回す水爆実験で北朝鮮は何を狙うのか」)で、中枢で何が起きているかは誰もわからないと指摘した。今般の党大会にも12ヵ国100人を超える外国の報道陣を受け入れているにもかかわらず、党大会の会議場への立ち入りは認めておらず、大会の日程も知らせていない。各日の大会の模様を夜、テレビ放送するだけである。

 北朝鮮はそのようなベールに包まれた国ではあるが、これまでの私の朝鮮半島との付き合いの経験を踏まえ、北朝鮮の意図を想像してみたい。

「核と経済」の並進を宣言するも
あくまでも核開発が優先

 北朝鮮が、今般党大会を開催する意図についてはいろいろ憶測がある。金正日時代の指導部を入れ替え、新しい人事を断行して金正恩体制を確立する。経済の配給体制が崩壊しており、闇市場が横行し、党への忠誠心が薄れてきているのを引き締める。国家の権力を金正日時代に軍に移したのを祖父の時代のように党に再び戻す。核の開発を進め、それによって米との対話の道を切り開き、外交的な孤立を打破する……これらの課題は北朝鮮が現在の苦境から立ち直るためには避けては通れないものであり、いずれも重要である。