「今日は苦しくても、あさってには、いいことがある」
80歳、現役・女社長・今野由梨が送る、人間関係・人生・仕事・お金・幸せ・病気・男女・子ども、の悩みが力に変わる「メッセージ」。
孫正義氏推薦の著書『だいじょうぶ。』より、抜粋&編集して、お届けいたします!

「日本をよりよくする」ことが、
私たちに与えられた使命

今野由梨(こんのゆり)
ダイヤル・サービス株式会社代表取締役社長。
1936年三重県生まれ。津田塾大学英文学科卒業。1969年ダイヤル・サービス株式会社の設立にこぎつけ、日本初の電話育児相談サービス「赤ちゃん110番」を立ち上げる。
1985年情報化月間「郵政大臣賞」受賞。
2007年日本の経済社会への寄与による勲章「旭日中綬章(きょくじつちゅうじゅしょう)」を受章。
政府「税制調査会」、内閣府「生活産業創出研究会」、金融庁「金融審議会」など、過去に44の審議会の公職歴をもつ。

 私は、創業するまでの10年間のうち、約半分をニューヨークとベルリンで過ごしています。

 当時、アメリカやヨーロッパは、すでに女性の社会進出が進んでいましたが、私は一度も、「日本に戻るのをやめて、アメリカやヨーロッパに残って仕事をしよう」と考えたことはありません。

 日本に戻れば、女性起業家がしいたげられることも、厳しい状況が待っていることもわかっていました。

 それでも私が帰国したのは、
「世のため、人のため、私の国、この日本のために生きる」ことが私の使命だと、信じて疑わなかったから
です。

 日本のために日本に戻るのは、鮭が海から生まれた川に戻るように、私にとって自然な流れでした。

 起業の目的が「自分のため」だけなら、日本にこだわる必要はなかったでしょう。「お金のため」だけなら、もっとラクに稼ぐ方法が、いっぱい、あったはずです。

 ですが、あの戦争を体験した私は、「この日本のために」という思いが、非常に強かった。
「罪のない子どもが命を落とすことのないように、そのために尽力する」のが、当然のことだったのです。

 先日、ある若手起業家を紹介され、食事を一緒にしたことがあります。私が「この日本のために役立ちたい」と考えていることを知った彼は、

「実は、自分もそう思っていますが、今までお会いしたどの方からも、『この日本のため』という言葉を聞いたことがありません。感動しています、嬉しいです」

と言って小さくふるえ、涙を流しました。
 私は彼の涙に、「この国の希望」を見出した気がします。「日本も、まだまだ捨てたものではないな」と…。

 世界を見渡せば、紛争は続き、貧困はなくならず、エネルギーも食料も枯渇し、緑の大地は砂漠になる……。
 もはや「地球」そのものが持ちこたえられないところまできているのですから、個人の都合、権利、利益ばかり主張する以上に、人として「もっと大きな使命」と照らし合わせながら、一人ひとりが行動すべきときが、来ているのです。

人には誰しも持って生まれた「使命」があり、それを成し遂げるための「能力」も与えられています
 でも、あなたが「自分には何もない」と思っているとしたら、それは、「個人のことだけを考えているから」かもしれません。

 この「地球時代」においては、「日本」という国の果たすべき役割は、たくさん、あります。
 自分の役割も、使命も、才能も、「世のため、人のため、国のために役立てたい」と決めたときに、必ず気づくものなのです。

 日常の生活の中にも、仕事の中にも、自分の使命を見つける「ヒント」は、たくさん隠されていると思っています。

 ヒントに気がつけないのは、「感性のアンテナ」がにぶっているからかもしれません。
「生きることは、平凡なものだ」と決めつけ、好奇心に蓋をしているからです。

 ヒントは目の前にあるのに、「もっとどこか、はるか遠くにあるはずだ」という先入観が目を曇らせていませんか。
 いつでも、どこでも、感性のアンテナを伸ばして、街ゆく人々を、緑の大自然を見ていれば、たくさんの情報が飛び込んできます。

「日常の中にも、自分の使命に気づくためのチャンスやヒントや真実が眠っている」ことを忘れないでくださいね。