名だたる大手事業者が「×」印

 そして、×印を付けられた企業をよく見ると特定の事業者が多い。進研ゼミで知られる教育産業のベネッセグループの一員、ベネッセスタイルケアが目を引く。業界最大手の事業者である。

 アリア深沢、グランダ田園調布、ボンセジュール町田鶴川、メディカルホームグランダ三軒茶屋、ここち多摩川大田……。施設名こそ異なるが、いずれも同社の施設。310の×印施設のうちベネッセだけで97ヵ所にも上る。3分の1近い。

 ニチイホーム三鷹。ニチイホーム南品川、ニチイホーム鷺宮など、ニチイケアパレスの運営する施設も多い。ニチイケアパレスは、介護業界の最大手、ニチイ学館グループに所属する。

 こうした名だたる大手事業者が×印を受けている。だが、事業者のほとんどは「厚労省が初期償却を認めている」と判断しており、×印のベネッセスタイルケアも「厚労省の事務連絡に従って契約書を作っている」と主張する。東京都のガイドラインについては「ノーコメント」と話す。

 初期償却を巡っては、老人福祉法の改正時に消費者団体から強いアピールがあった。適格消費者団体のNPO法人消費者機構日本(東京)が、内閣府に「法改正で初期償却は認められないことになった」と意見書を提出。この動きに東京都が応えたともいえる。

 さらに、同機構は11年11月に東京都を除く46道府県に「東京都と同じ条項を明示してほしい」と要請書を送ったが、残念ながら反応はなかった。

 もうひとつ、適格消費者団体のNPO法人消費者支援機構福岡(福岡市)が13年10月にLIXILを相手取って訴訟を起こした。同社の運営する住宅型有料老人ホーム「レジアス百道」が初期償却を契約条項に加えていたためだ。その後、LIXILが初期償却契約を削除したため、昨年8月に福岡高裁の控訴審判決を受け入れた。

 消費者契約法10条違反は受け入れられず、形式的には敗れはしたが、事業者が初期償却契約を削除したので「実質勝訴」となった。

 今回の東急不動産を訴える裁判は、これに次ぐものとなる。共に個別の事業者相手のため、制度としての初期償却の是非を問うものとはならないかもしれない。だが、裁判の過程で、東急不動産が「厚労省の通達や指示通りに契約書を作成している」と主張し続ければ、厚労省による改正老人福祉法の解釈の是非まで踏み込んだ判決が期待できる。

 裁判の行方次第では、多くの企業の社会的責任が問はれかねない。

 現実の有料老人ホームの支払い法は、月次払い方式を導入する企業が急速に増え、一括前払いとの両建てが一般的になってきた。ベネッセもこの3、4年で月次払い方式を各施設で相次いで取り入れるようになった。

 有料老人ホーム特有の「利用権方式」は日本独特のものである。かつて、有料老人ホームの利用者は一部の富裕層に限られていた。そのため、供給側に優位な仕組みがまかり通っていた時代があった。

 だが、今や特別養護老人ホームの個室ユニットタイプと大差のない有料ホームが広がってきている。利用者も一般市民、一般消費者になり、事業者には社会性や普通の日常感覚が求められてきている。